メモ用に書いた筈なのにノリノリになった学園パロ(日本総受け)
あらすじ
※ 日本は女の子です。後年齢は実史をまったく考慮してません。
それからここに登場した人物のみ設定公開です。
日本と中国は腹違いの兄妹だけどメチャ仲良し。
で、二人で亡き両親が経営していた本田荘を経営している。
そこの入居者はただ今ドイツ君とイタリア君のみだが、家族みたいである。
日本、イタリア、ドイツ、イギリス、は高校二年生で、中国、ロシアは三年。
アメリカは一年生。
日本は長髪の女の子で、アイドル並な人気なのに自分自身をつまらない人間だと思い込んでる。
故にアメリカの猛アタックは悪ふざけで、ロシアには嫌われてると思い込んでるし、
ましてやイギリス(生徒会長)に毎朝見られてるとは知らないし、
同居人のドイツが実は自分の事が好きだなんて夢にも思ったことが無い。
そんな日本が夕飯当番なので早めに学校から出ると、見知らぬ男に話しかけられる。
その男が道を案内してくれ、というのでその所まで案内していくと、どんどん人気の無い所に行ってしまう。
もうすぐ到着だ、という時急にその腕を掴まれ路地裏にひっぱり込まれる。
驚いて抗議をしようとするが、男の仲間が四人(しかもナイフと棒を持っている)そこで待ち伏せしていた。
中国さんから伝授して貰ったなんちゃって拳法も虚しく、押し倒されてタイツをナイフで裂かれた正にその時!
(ものすごく都合良く)その路地裏の近くの喫茶店で紅茶を飲んでいたイギリスがその現場を見ていて殴り込み!
引き裂かれたタイツに怒りで真っ青になり殴りかかる英タソ!がんばれ!
一人英に殴り倒されたのに驚いたのか思わずお菊から手を離してしまう男達。跳ね起きたお菊の裏拳で一人の男の鼻血が。
英に「逃げろ!」って怒鳴られても走り出した方は行き止まり。走りながら慌てて鞄から携帯を取り出し、掛ける。
鳴り響く虚しいコールが数回。後ろから追いかける男。
四回目でようやく電話に出たドイツ。お菊も焦っているがお菊からの電話になお焦る独!
今○○に居ます、助けてください! そう電話に向かい叫びながら男達を振り返ると、
先程イギリスに殴られ倒れていた男が立ち上がり、英の頭に持っていた木の棒を振り下ろす。
響く菊の悲鳴。と、同じに菊は長い髪を思いっきり引っ張られバランスを失い倒れ込む。
コンクリートに落ちた携帯はもう一人に踏まれ真っ二つに!初めて中国さん以外のアドレスを交換したのに、なんてポツリと考える菊。
もうお菊も気を失った英もドイツも真っ青なのに、ドイツの横でイタリアは「なにー?誰から?彼女?」とかいいながらめっさ笑顔でジェラートを頬張っている!
しかしドイツが血相を変えて走り出すのはコーラを飲んだらゲップが出る程必然である!!
気を失ったのにも関わらず数回殴られる英を見て、髪の毛を掴まれたまま抗議の声を上げる菊。
あの人は関係ないです!もう止めて下さい! 五月蠅い と一発殴られる菊(もう可哀想だよ自分!止めてよ!)
しかも思わず悔し泣き。笑ったまま英を殴るのを止めない男。
下を見ると、先程菊に裏拳を決められた所為で落とした様であるナイフを発見。
素早く拾い上げると、掴まれた自分の髪の毛をバッサリ切って数人の男をすり抜けて襟首を持たれて無理矢理上を向かされていた英に抱きつく。
菊の鋭い睨みに思わずたじろぐ男。近付いたらかっきってやる! と自分ののど元にナイフをあてがうお菊。
プッと男が吹き出した瞬間、男の体がどう考えても波紋使いで無い限り自分では絶対無理な体勢で横に吹っ飛ぶ。
体格のよろしいドイツの登場!しかも全速力で走ったのか微妙に肩が上下に揺れ、そのドイツに必至になって付いてきたのか、ヘロヘロのイタリア。手にはアイスが落ちてしまったらしく、三角形のコーンだけが・・・。が、意外な事に彼は持っていたバッグを四方八方に振り回し、そりゃぁもう懸命なたたかいっぷり!あまりに予想できない動きに戦く男達!
ドイツはドイツでイタリアでプロレス技の練習を日々している事も相まってむっちゃ強い。
お菊は自分の喉元にナイフをあてがったまま呆然としている間に、全員が倒されてしまった。で、続く。
「大丈夫か!」
血相を変えたドイツが日本の元に駆け寄り、その首もとにあてがわれたナイフをそっと、震える彼女の手首を掴み白い皮膚から剥がした。これ以上近付いたら死んでやる とかきっとこの脆そうで気丈な彼女は言ったのだろう、とドイツ直ぐに思う。
日本のその瞳はまだ大きく見開かれていて、睫と頬には涙の跡までハッキリとみてとれた。一度殴られてしまったのか、彼女の腫れた右頬が痛々しく赤色に変化し、その口の端には血が滲んでいる。
太もものタイツが破られ真っ白な肌が覗いてるのを見つけ、再びカッとドイツに怒りが込み上げるが、ゆっくりとその感情を沈める。
殴り込む前にその情景を目にせずに居た為、まだ自身を保つことが出来たのかも知れない。ドイツは上着を脱ぐと汚れた彼女の制服を隠すようにその肩に掛けてやる。
一通り現場を見るに、どうやら彼等の欲望は未遂で終わったらしいと、片膝をたてて辺りを見ていたドイツの口から安堵による深いため息が口から漏れた。
「もう、大丈夫だ」
呆然としたままの彼女の肩を引き寄せグッと抱きしめると、恐い思いをしたせいか、ハグに慣れていない所為か、(当然、前者だろう)一瞬ビクリと全身を震わせて堅くなった。
でもこれぐらいは許して欲しい。あんなにも心配させられて、心配し過ぎて死ぬんじゃ無いかと思った程なのだ。まだちゃんと此処に居る事を確かめるぐらい、許して 欲しい。
と、ドイツの後ろでフルフル震えていた(恐らく色々なパニックで)イタリアが、急にワッと泣き出して二人に抱きついた。
「にほーん!日本日本日本!!大丈夫?もう大丈夫だからね!みんなドイツがやっつけるからね!もうやっつけたけど!」
と、なんだかよく分からない文法のままワーワー叫びゴシゴシと彼女の頭を撫でる。その時気がついたのだが、彼女の美しい黒髪がもうそこには無かった。ハッと思わずドイツは息を飲むが、気がついている筈のイタリアはわざとどうでも無い素振りをして彼女に笑いかけた。
こいつのこういう所は本当尊敬に値する。イタリアが無邪気に笑うからこそ、無表情だった彼女に、ふと笑みが戻った。
「…あれ?コイツは…」
日本の後ろで倒れていて、酷く顔を腫らした男に気がつきドイツがその顔を覗き込むと、どうやら知った顔である。
「あの、私が連れ込まれた時に助けに来て下さったのです。お陰でドイツさんに電話が出来ました。」
まだ幾分声を震わせながら、それでもいつもの様にハッキリと日本が喋る。
どなたか存じませんが、見知らぬ私の為なんかに… と泣き出しそうな日本の台詞に、現生徒会長を色んな意味で憐れむしか無いな、と心の中でドイツは手を合わせた。
「ドイツさんっ!手を出して下さい!」
彼女の悲鳴じみた声に驚き自分の手を見ると、殴った手の甲の上の骨の部分の皮が衝撃に耐えられなかったらしく剥がれてしまっていた。
あ、と呟く間もなくその手は彼女の白いハンカチに覆われる。
「大丈夫だ。ハンカチが汚れる」
あまりにも真っ白で美しいハンカチが、自分の血を吸うことが耐えられない。と、取ろうとすると泣き出しそうな彼女の声に遮られる。
「ハンカチなんて、汚れる為にあるんです!」
それはきっと、彼女の精一杯のお礼なのだろう。言うことを聞かないと泣き出されそうだった。
出来上がったその場しのぎの包帯は、酷く美しくて、やはり自分の手には合わない様な気がした。
「イタリアくんは平気でしたか?」
「うん!オレ無傷―!」
そりゃそうだ。あいつはただ鞄振り回していたのだから。
一体オレはどうしたのだろう、と、グルグル回る様な錯覚の中ウツラウツラと考える。
目の前は真っ暗で、もしかしたら夜なのかも、と思ったが、それもどうやら違うみたいだ。
一体オレはどうしたのだろう。と先程の台詞をもう一度脳内で復唱する。
そう、オレは学校帰りにお気に入りの喫茶店に入り、お気に入りの紅茶とアップルパイを突きながらハイネかなにかを読んでいた。
で、ふと外に目線を送ると、そこにあまり見たくない光景があったのだ。
あの同級生で黒髪で内向的でよく言えば奥ゆかしく、悪く言えば表情に乏しい女、日本が、いかにも柄の悪そうな男と連れだって歩いていた。
まぁ、ショックといえばショック…いや、大ショックだった。
清純だと、一途だと思った女が、いかにもな男を連れ、更に裏に裏に進んでいくとあるのはしなびたホテル街しか無いこの道を歩いているなんて!
それは思わず紅茶をぶっ放しそうな程の驚きだった。
毎朝見かけて(中国から言わせれば覗き行為)少しばかり興味が(中国から言わせれば多大な)あったのに…
いや、待て。どうも様子がおかしい。
男は不意に日本の腕を掴むと、まるで投げ入れる様に彼女の体を無理矢理路地裏の狭い通路に押し込んだ。
思わず あっ と声が漏れた。いや、漏れるより速く立ち上がっていたかも知れない。とにかくカウンターに千円札を投げ入れると(いつも食しているので値段は知っている)店員の声も聞かずそのまま道に、まるで鉄砲玉の様に飛び出した。
今考えればあの時誰かに電話をしていれば良かったのだが、そんな余裕はもう無い。
彼女の悲鳴が一瞬聞こえるが、誰かが押さえ込んだのか、やがてくぐもった。胸に循環している血液が全て足に下る様な感情を覚えた。
先程の路地裏に駆け寄ると、大の男が五人で日本を押さえつけている。ちょっ!おま!多すぎwとか一瞬頭に浮かぶが、破られたタイツと、そこから覗いていた真っ白な太ももを見て再び顔に血が上る。
なにせエロかった。いや、違う!そうじゃない、決して無い、といえば嘘になるが、あれは今考えて「エロかったなぁ」って感じであり、その時感じたのは怒りだけだ!本当!
柔道やら空手やら合気道は昔から習っていたし、その手の事には自信があった。が、流石に相手は五人の上にみな武器持ちだ。
その上あの真っ黒でキラキラ光る美しい黒髪が、あんなに汚い男によって乱暴に掴まれたのを見た瞬間、全てにおいて隙を作ってしまった。でも違うのだ。あの黒髪は特別だから。
初めて彼女を見かけたのは入学式だった。兄を待ち桜の木の下で一人立っていたその姿は、それだけで一遍の詩の様だった。
髪は黒く豊潤だが滑らかで、東洋人独特の柔らかい笑みは自分を立ち止めるのに何の問題もなかった。今思えば一目惚れなのかも知れない。
彼女の髪を、彼女自身を冒涜していいものなんて、この世にあってはならないのだ。
そう、彼女、日本………あれ?
不意にもの凄く大切な事を思い出し、カッとイギリスは目を見開き慌てて上半身を起こした。わ、という三つの驚いた声がする。
あまりにも急激に頭を振った所為で、打たれた後頭部がズキズキと酷く痛み、思わず「つっ…」と声を漏らしてうずくまる。
割れてしまったんじゃないか、と思ったが、意外にもあるのは大きなたんこぶだ。
「大丈夫ですか?動かないでください。」
もの凄く優しくて柔らかいが、人に「否」と言わせぬ凜とした物言いだった。間違いなく、彼女だった。
慌てて声の方を向くと、そこには今まで見たこと無い程度アップな日本!長い睫に黒い瞳が、まさしく彼女だ。
「お前こそ大丈夫か?」
彼女の後ろにチラリと目線をやると、そこには問題児イタリアと彼女が電話していた主である堅物ドイツが立っていた。間に合った様だ。ほっと息を吐く。
「はい、イギリスさんのお陰です」
日本が今まで一度も見たことのないニッコリとした笑みを自分に送った。しかも名前を覚えられている!(本当は日本はドイツから教わったのだが)
顔に今度は恥ずかしさで血が上るのを覚えて、思わず俯いた。ああクソッ、慣れない!
「兄を呼ぶので、もう少々横になっていて下さい。」
日本はそう言いながらゆっくりとイギリスの体を横にさせる。本当は頭がクラクラして上半身を起こしているのも辛かったから、少しありがたい。あの中国が来るのは嫌だが。
それから日本はイギリスに、濡れた布をそっとあてがった。それが彼女のタイだと気がつく時には、またイギリスはフワフワとした夢心地になる。
本当いうと嫌だった。けれど電話しない訳にはいかないだろう。
しかもイタリアにさせたら恐らく、いや、絶対意味が通じない。だからといって今暴漢に襲われたばかりの彼女にかけさせる訳にはいかない。
故に、彼女の兄、中国への電話は必然的にドイツの役回りとなってしまったのだ。
部活中なのだろう。十回のコールがなってようやく、彼はドイツの電話に出た。
『何あるか!今部活中ある!先生に見つかったら取り上げられちまうあるよ!』
ブーブー文句を垂れながらもきちんと電話に出てくれるあたり、彼らしいといえば彼らしい。
「緊急だ。しかも日本の事。」
日本、という単語一つ出せば、中国の文句がピタリと止まる事ぐらい知っていた。ちょっとだけ意地悪してやろうか、などと柄にもなくドイツの中で持ち上がる。
「実は今日の帰り道で、日本が暴漢に襲われた。」
ヒッ…と息を呑む音の後の、数秒の沈黙。それから ぼ…ぼうかん… と呟き、今度は 暴漢!? という叫び声を上げてから何かが盛大に倒れる音がこちら側にまで響く。
よろけた彼が机の上の物をばらまけたのか、彼自身がぶっ倒れたのか分からないが、どちらも容易に想像できた。
それから彼が他人の事で大袈裟になるのは日本だけ、と相場が決まっているが故に、彼の周りのそのあまり平和的でない叫び声に驚き日本崇拝者が狼狽えているのも、容易に想像が出来た。
「いや、日本は無事だ。未遂で終わった。」
何かがガバリと起き上がる音がした。どうやら彼自身がぶっ倒れていたらしい。
『そ。そうか。今どこあるか?直ぐ行くある!』
幾分活気を取り戻し、ガシャガシャと動き出したらしく、もう下手したら学校から飛び出しかねない。それでは電話した意味の半分が失われてしまう。
「いや、実はタイツが破かれたから新しいのと、あとタイもあれば欲しいって…」
言ってるから、買ってきてくれないか。と言い終わる前にまた何かが盛大にぶっ倒れる音が響いた。
「に、にににににほーーーーーーーん!!!!」
泣きながら中国が現れたのは、人間的にあってはならない早さだった。学校からここまでいくら走ったって、ヒカリとかノゾミとかに頼まない限り無理な速度だ。
この人を敵にまわしちゃいけないな、とドイツが静かに思う。まわさないで日本を手に入れるのは無理だろうが…
しかもまだ部活着で、しょったかごには弓道の矢が入っていてガチャガチャなっている。
彼の姿をみとめた日本も、まるで弾かれたかの様に立ち上がり、広げられた彼の腕にスッポリと包まれた。
「日本、我の日本、可哀想に、殴られちまったのか。痛いか?恐かったあるな。髪も切られちまったのか。でももう大丈夫ある。」
大丈夫、大丈夫、お家へ帰ろう。と繰り返しながらボロボロ泣き出した中国の背中に、彼女もまた手を回しシッカと抱きつくと緊張の糸が切れたのかワッと泣き出した。
ついでにドイツの隣にいたイタリアもワワッと泣き出した。