学パロ

 

メモ用に書いた筈なのにノリノリになった学園パロ(日本総受け)

 

※ 日本は女の子です。後年齢は実史をまったく考慮してません。
   それからここに登場した人物のみ設定公開です。

 

学パロ
 
 
なんと!今回から!両思いプログラム発信です!
皆様から投票承り、見事一位を射止めた「海賊ツンヘタデレ不憫紳士」ことイギリスがやっと日本ちゃんとお近づきになります。
でも英日編は一体どれほど書いたら終わるのか、全然見通しがついて無い状態ですよ。
多分この一話書き上げたら次の中日書き始めると思われます。
その結果、英日両思い編完結は多分この一話じゃ無理だろうなぁ。と思うよ。
気長に待っててやって下さいませー

それにしても拍手での英へのコメントは皆様軽く辛辣で最高です。(´∀`*)
 
 
 
英日両思い編 第一話  (第十話)
 
 やっと訪れた日曜日、久しぶりに外出様の私服に身を包み、イギリスは牢屋の様な我が学校を後にした。
 スキップの一つでもかましてやりたくなる様な天気の良い日で、知らずイギリスの足取りは軽くなる。まぁ、天気が良かろうが台風が来てようが、はたまたツイスターが学校を飲み込んでいようが、きっと彼の足取りは誰にも負けず軽かっただろう。下手したら天まで届きそうだ。
 ソレもその筈、と、ここまで書けば勘の良い方はお気づきになられた事と思われるが、最近《イギリス》と書いて《ツンヘタデレ》と読まれている(私の中で)彼、イギリスはなんという事か、かの日本をデートに誘っていたのであった……!
 吃驚仰天、奇想天外!一体全体なにゆえこの様になったのか、恐らくそこが一番皆様の気になる所であると思われます、が、そこの所を詳しく説明すると今から三週間前にまで遡らなければならないので、誘いたくても誘えないイギリスの苦悩は放っておこうと判断し、イギリスが日本に声をかけた所から始めたいと思います。
 否、ただしくは日本がイギリスに声をかけた。のです。
 それはこのルンルン気分でイギリスが歩いている四日前、確か昼休み、それは購買の前、一人で歩いているイギリスの背後からの一声で始まった。
 
「イギリスさん」
 まごうこと無きその声に、名前を呼ばれたイギリスは一瞬幻聴かと思い、そして一応振り返る。
 そろそろと振り返ったイギリスの目の前には、約三週間前から声をかけ損ねていた人物が居た。言い訳では無いが、声をかけ損ねていたのは決して自分の勇気が無かったからでは無い。主に中国とか中国とか中国とかが彼女、日本の近くに居た為だ。
 そしてこれまた言い訳では無いが、決して自分は中国が恐い訳では無い。これは話すと長くなるが……(以下略)
 とにかく、そんな彼女から声を掛けられたのは不幸中のなんとやら。否、幸いどころの問題ではない。
「何か用か?」
 自分を見かけて駆けてきてくれたのか、日本の頬は走った為か軽く蒸気し、白桃の様に紅に染まっていた。それなのに自分が声を出すと、どうしても突き放してしまうかの様な言い方になり自分で腹が立つ。
 自分の言い方にか、彼女の顔から先程の笑顔が少しだけ消え、そして現れたのが困惑気味ないつもの作り笑いで、思わず先程の自分を責めるも後の祭り。
「いえ……ただイギリスさんが見えたので、挨拶をしようと…」
 反らされた目線と、やや小さくなる声に思わず数歩さがり戦きそうになるのを必死で耐え、懸命に頭を働かせる。
「あ、あのな。」
 今にも離れていってしまいそうな日本に、今あらん限りの勇気に希望を上乗せし、イギリスはようやっと口を開いた。
 不思議そうに顔を持ち上げた日本にイギリスも目線を上げて向かい合う。
「この間紹介してくれたあの本が映画化したの、知ってるか?」
 尋ねると、あの黒い瞳が少しだけ揺れ、頭を傾げて自分の心を読み取ろうとするかの様に一心に見つめながら小さく首を振った。
「それ、観に行かないか?一緒に。」
 自分の顔を見つめたままキョトン、とした日本を余所に「ち、違うぞ!一人で映画を観に行くなんてみっともないからだ!」なんて叫ぶと、日本の作り笑いが本物の柔らかい微笑に取って代わった。
「わかりました。いつにしますか?」
 そのまさかな台詞に、イギリスは思わずクッと息を飲み込み日本を見つめると、クスリと日本は喉を鳴らした。
 
 
 そして四日後、イギリスはこうして気持ちスキップをしながら道々全ての物事に脳内でツッコミなんかを加えている。
 あと一つ角を曲がれば日本との待ち合わせの場所、という所でどうしてもにやけていた顔をキュッと半ば無理矢理引き締め曲がると、まだ15分前だというのに其処には既に日本がチョコンと立っていた。
 慌てて走っていくのも何だか間抜けだが、そのちょっと心細げな姿を見れば自然足が速まるのも仕方が無いじゃないか…!
 やがてコチラに気が付いた少女は、自分を見留めるとふんわりと微笑んだ。彼女の着た白色のワンピースがふわふわと揺れる。
「おはようございます」
 にっこりと微笑んだ日本に半ば見とれつつイギリスは挨拶を交わすと、連れだって映画館に向かう。
 日曜日という事もあって沢山の人が自分達の周りを越していき、慣れない靴なのか赤いパンプスに足をもつらせながら日本は必死でイギリスに付いてきた。
 出来るだけ彼女と歩調を合わせるのだが、それでも後ろに行ってしまう彼女の腕をそっと掴むと、驚いた黒い瞳と合い思わず俯く。
「大丈夫か?」
 声を掛けると、日本は俯いたまま はい と小さな声で返事をした。
 このまま腕を持って歩いてもいいものか……そればかりが気になって仕方が無いのだが、今離す訳にもいかないだろう。と、勝手に解釈しその細い腕をシッカと掴んだまま進んでいくと、後ろから日本の声が追いかけてくる。
 自分の名を戸惑いながらも呼ぶその声に振り返り掴んでいた腕を離すと、代わりにその掴んでいた右手をグイッと彼女の前に差し出した。
 え? と驚いた彼女の瞳に、きっと自分はさぞ真っ赤な顔で映っているだろうと思うと、思わず顔を反らす。
「このままじゃいつまで経っても目的地に着かないだろ。いいから、手。」
 大きく見開かれた真っ黒な瞳が微かに揺れ、次に俯いた時は眉を歪め可哀想になるぐらいその頬を真っ赤に染めた。
 それでも差し出された手が、自分の手を掴む。酷く柔らかくて、暖かい掌だ。そう思わずイギリスが日本の手を見つめたその瞬間、何か凄まじい『視線』と表現するのも全然足りない、何か呪いめいたモノを背後に感じ思わず全身が震え上がる。
「な、なぁ、日本。……もしかして今日オレと出かける事、中国とかに言ったか…?」
 と、まさに怖々尋ねれば、日本は例えるならそう、花でも周りで咲き乱れそうな可愛い笑顔で「はい!それが何か?」と言い首を傾げた。
 日本がそう言ったのと同時に、真っ青になったイギリスは人波を掻き分け、日本の手を掴んだまま走り出した。後ろから掛かる戸惑った声色なんて気にせず、今は目覚めかけた獅子から逃げるのに精一杯。
 やがて人波を消えかけた頃やっと足を止めたイギリスに、流石の日本も肩で息をしながら涙目で自分を非難気に見上げる。
「……わ、悪い。走りたかったんだ。」例え真実を言った所で、きっと彼女は理解してくれない。それどころか下手したら嫌われるんじゃないかと思い、出てきたのはやっぱり変な言い訳だけだった。
 それでもちょっと眉間に皺を寄せただけで彼女はあまり気にしないらしく、それ以上つっこんではこない。
「ちょっと遠くの映画館になるが、良いか?」
 ようやっと息が落ち着いてから尋ねると、日本はいつものふんわりとした笑みを浮かべて一度頷いた、が、その顔がどこか辛そうで思わず目だけで探ると、その右足を少しだけ地面に擦っている。
「右足」
 特に何も考えずにそう言うと、彼女の肩がビクリと震え戸惑う様な顔をした。
「いえ、あの、気にしないで下さい……大丈夫です。」
 ぶんぶんと両手を振ってそう言うが、はいそうですか、と引き下がるわけにはいかない。
 しゃがみ込むと逃げだそうとした右足を掴みそっとそのかかとが現れる様に赤いパンプスを脱がすと血が滲んだ結構酷い靴擦れがあった。
 やっぱりと溜息を吐く。こうなるまで言わなかった彼女を責める前に気が付かなかった自分に腹が立つが、あの状況下では走って逃げるのがやはり常識ではなかろうか。
 と、そんな馬鹿な事を考えるよりも薬局を探すべきなのだが、近くには無かっただろうし、まさか裸足で歩かせる訳にはいかない。
「……あの、イギリスさん、本当大丈夫です。放って置いて下さい。」
 足が掴まれたのが恥ずかしいのか何なのかいまいち理解出来ないが、彼女は赤い顔をし、泣き出しそうな声色でそう言った。
 ……今日は自分が何のつもりで日本に声を掛けたのか、やっぱり彼女は解っていないらしい。まさか、放っておくなんて事出来る筈は無いのに。
 ポケットの中からハンカチを取り出し(紳士のたしなみだ!)彼女のその怪我の部分にそっと、それでもとれない様にしっかり結びつけた。
「のろのろされたら困るからな。家に帰ったらちゃんと消毒しろよ。」
 はい、とやっぱり顔を赤くさせた日本がそっと微笑んだ。その笑みは四年前から微塵も変わらない。
 
 
 映画には予定の時間と大幅にズレた時間に観ることになり、二時頃に遅めの昼食を摂ることとなった。
 映画の内容は珍しく原作と勝らずとも劣らず、盛り上がりでは彼女がそっと涙を拭うものだから、こっちは何だか映画どころでは無くなってしまう。
 面白かったですね! と目をキラキラさせる日本に思わず笑いが浮かぶが飲み込んで返事をした。
 
 この後は一体何処に行くべきか昨日の夜散々悩んだものの、結局答えに辿り着けなく寝不足で今食しているペペロンチーノの味すら分からない。
「あの、イギリスさん。この後買い物に付き合って下さいませんか?もうすぐ中国さんの誕生日なんです。」
 あいつに誕生日があったなんて、それは初耳だ。と、少しだけ不機嫌になりかけるものの、この煮詰まった状況での最良な打開策であるその提案に乗らない訳は無い。
「わかった。どこにでも付き合おう。」
 そう自分が言えば、カルボナーラを食しながら彼女が笑った。
 
 彼女がテディーベアが可愛いと言えばそれを速やかに脳内でチェックしたり、小物を興味深げに眺めていたらそれも直ぐに脳内でチェックをしていく。
 兎に角自分には全くと言っていいほど彼女の好みを分からないのだから、彼女がちょっとでも微笑んだ物事は全て忘れないようにしたかった。
 結局彼女が自分の兄の為に購入したのはお茶セットだった。最近割ってしまったらしい。
 
 買い物が終わる頃になると、空ももう暗く彼女の帰路である人気の無い道は真っ暗で一人で歩くには些か心許ない。
 真っ暗な道に二人分の足音だけが響き、なんだか幽霊の一匹でも躍り出てきそうな雰囲気だ。
 そっと、何か暖かいモノが右手に当たり、思わず弾かれたかの様に手を挙げてソレから避けると、顔を真っ赤にさせた彼女と目が合い時間が止まった。
「す、すみません、私……つい…」
 顔を赤くして目を伏せる彼女に、自分までも体温がもの凄い勢いで上がっていくのを感じ、此処が暗闇でどれ程良かった神に祈りを送りたい程。
 それでもこんな機会を逃したらきっと今夜も又眠れない。
 先程触れた手を大きく開いて彼女に差し出すと、驚いた顔を持ち上げて彼女が自分を見やる。
「……手を、貸せ。」
 暗いのがダメなんだろ。 そうぶっきらぼうに言い放つも、はっきりいって意識が飛んでしまいそうな程心臓が鳴っているのがわかる。
 ほんの小さな間の後に、そっと彼女の掌が自分のソレと重なった。
「お言葉に甘えさせて頂きます」
 と、そう微笑んだのが見えなくても分かる。柔らかい彼女の薫りが、この暗闇で彼女の存在を大きくさせた。
 ジジ… と白い色を放つ街灯が気味悪げに点滅をしていても、なんだか今日はそんな事どうでもいい。
「ハンカチ、洗ってお返ししますね。」
 彼女のそのセリフに、ああ、とだけ返し空を見上げると本当に明るい星だけが、それでも存在を強調させるかの様に煌めいていた。
 二人分の足音と掌に感じる暖かさが何だか非現実的で、それでいて妙にリアルで……このアスファルトの道のりが何処までも続いている気さえする。
 
 それでもやがて見えてきた本田荘のオレンジの光に、心の奥で酷く落胆する自分が居た。
 彼女の手がスルリと離れ、そこに風が差し込み不思議な程何か大きなモノが欠落したかの様に感じ、思わずその手を強く握る。
「明後日、放課後なら空いてる。生徒会室で待ってるから。」
 数歩離れた彼女にそう言うと、彼女は振り返り微笑む。その殆ど夜の闇で塗られた瞳がキラリと光った。
「はい、明後日ならハンカチもキチンとお返し出来ると思います。」
 それから、本当は話があるんだ。と、それはどうしても自分から出ては来ない。
 言いたい事があるんだ。四年も前から。
「……おやすみ」
 でも今言えるのは、たったそれだけ。しかもまだ六時だというのに、そんな言葉。
「おやすみなさい」
 笑った彼女が自分に向かって手を振りつつ、そっとドアノブで手をかけた。
 本当はもっと素直に手を握れたら。一緒に居れたなら。
 やがて消えていくだろう彼女の背中をただじっと闇夜で見送りつつ、彼女と触れた手を強く握りしめた。