学園パロ

学パロ
 
 
瑞日のつもりで練り始めたら激しく希日になってしまって困ってます(´・ω・`)
後今から考えれば日本の実家は和風にすれば良かった orz
 
中盤にあるギリシャと日本幼少期は『なごり雪』を聞きながら書いたらすっごいノリノリになってしまいました。サーセンww
今読み直してみると、何か失敗した詩人みたいな文章になってます……
それからなんだかピンクシーンに突入しちゃって書いててドキドキしました。
 
なんか瑞西さんが可哀想(?)なので、瑞西編だけ全三話になりそうです。本当……これ希日です。
 
※ 非常口は『学園祭編』(英日)参照……今更あんなの読み返せないのですが、確かそんなシーンが出てきていた様な気がします。
 
 
瑞日
 
 
 今思い出そうとすると、その映像は全てセピア色に染まる様な古い古い記憶。自分は一匹の蝶を追いかけて見知らぬ道を走り抜け、そうしてその巨大なお屋敷に着いた。まるで映画の時代劇の撮影場所の様に現実離れした大きな庭園と、何坪あるのか分からない貴族が住む様な洋館。まるで明治時代にでもタイムスリップしたかの様だ、と、幼いギリシャはボンヤリとその屋敷を見上げた。
 けれど自分が追いかけていた一匹の蝶がひらひらと舞い上がって鉄格子の合間から奥に消えていくのを見つけ、慌ててどこか自分が入り込める隙間が無いか探す。と、裏門が開いているのを目敏く見つけ、辺りをキョロキョロ見やり人が居ないか探した。誰かが入って直ぐなのだろう、奥の方で数人の男が喋っているのを聞き、誰にも見つからない様に体勢を低くしてから音を立てないように敷地内に侵入する。
 思い出は脚色されていく物だというが、ここからハッキリと自分の目には鮮やかな色が映る。庭園を進んで行くにつれて蝶どころでは無くなっていたギリシャは、キョロキョロと辺りを見回しながらこの不思議の国のアリスにでも登場しそうな光景を楽しそうに眺めた。そしてやがて赤い花が咲き乱れた一つの花壇の前まで辿り着く。
 その時だった。上から物音が聞こえ、ギリシャは吃驚して建物の上方を見やる。と、そこにも驚いた顔つきの少女が一人、窓を開け放ってコチラを見やっていた。恐らく二階なのだろうが、結構な距離ではあった。その少女の頭の付近をフワフワとギリシャが追いかけていた蝶が舞う。
 暫く無言で二人見つめ合った後、少女は嬉しそうにふんわりと微笑んだ。それが自分と彼女、日本との出会いであった。
 
 
 
  瑞日……のつもりが希日に偏る瑞日……ごめ、瑞西出てこない・笑 (16)
 
 
 太陽が軽く傾いてきてきたのか、オレンジの光が窓から降り注ぎ、やっとその黒い髪が再び肩程まで伸びてきた日本がその光に包まれて一人、彼、ギリシャの目の前にポツリと立っていた。彼女の立っているそこはギリシャのクラスで、放課後の今は当然声一つしなく、日本はまるで静止画の様に壁に背をつけてぼんやりとしていた。
「もう誰も居ないよ……」
 彼女を見留めた瞬間、足が勝手にピタリと止まる。ギリシャの隣を歩いていた女の子が腕を絡めてきて、思わずギリシャが少しだけ眉を顰めた。いつもはそんな姿を誰に見られても関係無いと思えていたのだが、なぜか日本にだけは見られたく無い。居たたまれない。
「今、学級日誌を置きに行ってらっしゃるそうです」
 ギリシャが声を掛けてからやっとコチラの存在に気が付いたのか、日本はハッと顔を持ち上げ、そしてちょっと戸惑ってから照れた様に笑ってそう言った。
「……スイス?」
 最近日本とスイスが、時折何かを二人で話している所を目にする。周りの人々もその光景を面白がって見ているのだが、何せ相手がスイスだから誰も二人に関して突っ込めないで居た。
 日本はギリシャの問いかけに、一瞬驚いた様に目を見開いてからそのままスッと瞼を伏せその頬を赤らめる。と、ほぼ無意識にギリシャはその日本から目線をズラし、夕陽が差し入る窓をじっと見やる。それからハッキリと心臓が沈むのを覚えた。
「帰る」
 一言置いて絡められていた女の子の腕を振り解き寮に向かって歩き出すと、後ろでこれから一緒に遊びに行くはずだった女の子が自分の名を呼ぶが、それを無視して歩み続けるとすれ違った日本が不思議そうな顔でコチラを見やった、が、敢えて大きく目線を反らす。どこか遠くで鳴り出した夕暮れ時のチャイムを聞きながら殆ど無人の廊下を足早に抜けた。
 
 
 
「おぉーい、ギリシャ、早く準備しねぇと授業始まるぞ」
 ゆったりと布団の中から頭をもたげ時計を覗き込めば、いつもなら朝食をとりおえている時間だった。外ではダンダンと隣に住んでいるフランスがドアを叩く音が聞こえるが、無視して布団に再度潜り込んで耳を塞いだ。やがて諦めたのか、気が付いたときにはノックの音も聞こえなくなっていた。
 時計は二時限目の始まる時刻を指していて、朝食を食い損なった為に一度大きく腹が鳴る。が、部屋の中には口にできる物なんて特に無いし、今更食堂に行っても何も出してはくれないだろう……
 ギリシャは大きな溜息を一つ吐き出すと、仕方がないからもう一度眠りにかかる。昔から眠りには貪欲だったし、何か酷く疲れていて、睡魔はすぐにギリシャを包み込んだ。そうして次に目が覚めたのは昼休みを知らせるチャイムとなった。
 流石に寝過ぎた……重たくなった頭を軽く振りながらゆったりとした足取りで人が混雑している食堂に向かう。寮住まいの人間は一日三食分の食事券は配布されるのだが、寮に住んでいない人々もこぞって学食に来るものだから、いつでもココは酷く混雑していた。
「なんだぁ、お前顔色わりぃぞ。熱でもあんのか?」
 この混雑する中でも自分を見つけて声を掛けてきたのはフランスで、今朝方起きてこなかった事が心配だったのだろう、自分を探していたのかも知れない。一見軟派なだけなのに案外世話焼きだ。
「ん。今日は体調悪い。」
 今は構って欲しく無く、適当な事を言うとそれでもフランスは2,3度頷き「そうかそうか」と納得してくれた。本当は何故か鬱々としてやる気が無いだけなのだが、物事をこれ以上ややこしくするのは嫌だった。とにかくさっさと昼食を摂って部屋に戻ってしまいたかったので、フランスには適当な事を言って一人さっさと長蛇の列に並んだ。
 
 午前の授業に出なかった言い訳も「熱っぽい」で済まして、一人寮の部屋に帰ってくると上に着ていたシャツだけを脱いでベットに倒れ込む。体中が何だかだるい気がして、もしかしたら本当に熱でもあるのかもしれない。と、シーツを身体に巻き付けながらボンヤリ考えた。
 窓から差し込む穏やかな光は、どこか暖かい既視感をもよおす。それでも生まれて幾度となく見つめてきたその光が、今は見たくもなかった。
 さっきあれ程寝てしまったからか、また目を瞑っても睡魔は訪れずにただギリシャを苛々とさせる。昼休みはまだ十分に残っていて、窓の外から楽しげな声がまたギリシャの眠りを妨害していた。と、その時ドアが数度ノックされる。
 またフランスか、と、無視を決め込むことにして布団に潜りかけるのだが、ドアの外から意外な声が聞こえ、思わずギリシャは頭を持ち上げる。
「……ギリシャさん?」
 それはまごうことなく自分の幼なじみ、日本の声である。
「……開いてるよ」
そう一言言うと、ちょっと躊躇ってからゆっくりと日本によって扉が押し開けられる。声を聞いてもまだ訝しんでいたギリシャは、その姿を見留少しだけ眉間に皺を寄せると軽く溜息を吐いた。
「どうやって男子寮に入ったの?」
 自然つっけんどんな言い方になるも、彼女はちょっとだけ肩をすくめてみせるだけで、何だか全てを見透かされているかの様な気分になる。それがまた悔しくて、持ち上げていた顔を再びシーツに潜らせた。日本はパタリと扉を閉めるとそんなギリシャの横たわるベッドの横に歩み寄る。
「フランスさんが心配して、私がギリシャさんと幼なじみだから様子を見てくる様に言われまして。忍び込むときは皆さんあの非常階段をお使いになるんですね」
 クスリと喉を鳴らして小さく微笑む彼女を、布団の合間からジッと見やりつつ心の中でフランスを呪う。そんな出歯亀な所があのおっさん(顔)の嫌な所だ。が、ギリシャのそんな心中を当然知りもしない日本はどうやって入手したのか、袋の中から林檎やらオレンジやらを取り出して近くの机に並べる。
その顔を盗み見ながらもぞもぞとギリシャはやっと布団から顔を出した。幼さを残した彼女も、それでもやっぱり大きく成り大人になる。幼い頃は何度も彼女の邸宅に侵入して、一緒に庭で遊んだりもした。彼女が熱を出した時は彼女の眠る部屋の窓の下で何時間も座り込んで綺麗な庭を眺めた。
 幼い時父親の仕事の関係で遠くに引っ越す事になり、雪降る中自分は彼女の元に寒椿一本持って走った。銀世界に咲き誇った赤い寒椿が酷く美しかったから、きっと彼女に似合うだろうと思ったのだ。本当はずっと前から引っ越す事は知っていたのだけれど、当日まで結局日本には言い出せなくて、だからほんの小さな時間の隙間に日本の元へと走った。窓から覗いてギリシャが居る事に気が付いた日本は、いつもの様に下に降りてきて微笑む。
 でもいつもと雰囲気が些か違う事に気が付いたらしい日本は、黙ってジッとギリシャを見やる。その手に持たれた寒そうな寒椿を。どこか泣きそうなギリシャの顔を。
 元来自身の感情にはストレートな物言いしか出来ないギリシャだから、この時なんと言っていいか分からなかったのだ。だからただ手に持っていた寒椿を日本に押しやった。その赤い寒椿にうっすらと白いが積もり、光沢のある濃緑な葉は銀世界から当てられる光をキラキラと反射していた。そっと寒椿を受け取った日本の指先は寒さでほんのり赤く染まっている。
 その時、その瞬間、生まれて初めてギリシャは切なさを覚えた。単語として知らないその感情に酷く狼狽し、胸の辺りに何かが入り込んだかの様な重たさを感じる。
 そして不意に、目の端をチラチラと通り過ぎていく真っ白い雪は、まるで彼女だと思った。触れたら瞬時に溶け出して、その美しい造形すら水になってしまう、一瞬だけの触れてはいけない存在なのだ。だから抱きしめていいのは生涯一回きりで、それも一瞬で、きっと今しかない。殆ど背も変わらない彼女を一度だけギュッと抱きしめれば、互いに厚着の所為で体温は感じない物の、ギリシャの胸の中で心臓を圧迫していた物が、一瞬で破裂したかの様に消えていく。
 後は元来た道を走り抜ける。彼女は自分の名を呼んだだろうか?シンシンと降り積もる雪が、そこいらの音を全て食べてしまったのかも知れない。その時自分は泣いては居なかった。ただ鼻とほっぺたが外気に晒され、酷く痛かった。吐き出す息は白く、もくもく舞い上がり亜鉛色の空にことごとく消えていく。
 それが小さい頃の別れで、再会したのは中学生の時。やはり亜鉛色の雲が空一面を埋め尽くし、辺りは変に明るく、ただ大粒の雪が音もなく空から舞い落ちている。見た瞬間に幼い頃に別れた日本だと気が付くのも当然というべきか、相も変わらず彼女は寒椿の似合う雪の結晶の様。細い手足と白い顔、長い黒髪がサラサラと揺れて、伏せがちな瞳も幼い頃そのままだった。
 だからなのかも知れないが、どうしてもギリシャは今でも日本に手を出せない。流石に子供の頃とは違って巫山戯て抱き付いたりはするのだが、他の女の子みたいな事は出来なかった。嫌われるのが嫌だとか、そんな単純な理由では無い。ただギリシャにとって日本は幼い頃からの絶対者だったのだ。崇拝とは違う、確かに恋の一種なのかもしれないが、汚してはいけない絶対的存在。
 だから彼女はずっとそのままの存在として宙に漂っていて欲しかった、が、その日本の手を引っ張って連れて行ってしまう奴が現れた。それが誰かというのに問題は無い、ただそんな人物が存在しているという事が問題なのだ。
「体調はどうですか?」
 差し出された彼女の掌がギリシャの額に押し当てられ、ほんのりとした彼女の体温がそこから感じれられる。日本は軽く肩を竦めると不思議そうに顔を傾げた。
「変ですね。熱は無いみたいですが……」
 嘘なのだから、それはそうだ。それでも日本はギリシャの体調が芳しくないと信じて疑わない。そのあまりの白さが好きでもあるが、やはりどこか苛々させる。
「……ねぇ、日本はスイスが好きなの?」
 単刀直入にそう訪ねると、林檎を剥こうとしていた日本はビクリと固まり大きく目を見開いてコチラを見やる。その頬が昨日と同様に赤く染まっていくのを、暫く観察していたのだが、突然といって良いほど溜まっていた苛々が溢れだした。不意にガバリと身を起こすと、ベッドの横に座っていた彼女のその細い手首を掴み自分の寝ていたベッドの上に押し倒す。
 ナイフと剥きかけの林檎が床に落ち、林檎はゴロゴロと物が沢山落ちている床を転がって音を立てる。学校で午後の授業開始の予鈴が鳴り響くが、ギリシャに押し倒された日本は、驚きで大きな瞳を見開いたまま人形の様に微動だにせず一心にギリシャの真っ直ぐな瞳を見つめた。痛いほどの沈黙が暫く辺りを支配していたのだが、ようやっとギリシャが口を開ける。
「スイスが好きなら、なんでココに来たの……?」
 いつものボンヤリとした雰囲気とまるで違うギリシャのその目線に、怯える様に日本は目を瞠った。黒い瞳がゆらゆらと揺れる。
「日本は警戒心がなさ過ぎる……それとも俺は対象外?」
 日本の頭上に彼女の両手を左手で纏めて掴み上げると、日本の白くて細い首筋にそっと唇を寄せた。彼女が震えるのが分かる。無論、今日本が感じるのは恐怖だけなのだろうが。空いた右手でセーラー服の上から主張の少ない胸の膨らみに触れると、押した分の弾力が帰ってきてギリシャを安心させる。他の女の子と同じ感触で、やはり彼女だけが特別だなんて思い込みだったのかもしれない。
 裾から手を差し入れて、ささやかな乳房を覆い隠す白いブラジャーが丸見えになりまで捲り上げると、彼女が悲鳴を上げる。誰も居ない寮内では誰にも聞いて貰えないし、その細く筋肉も無い腕では自分の手を払いのけることも出来はしない。彼女の両手を捉えた左手に更に力を込め、暴れない様に両足をしっかりと自分の足で押さえつける。
 フックを外そうと手を背中に回した時、日本の身体がカタカタと小刻みに震えていて、それが故にギリシャはそっと顔を持ち上げて震える日本の顔を覗き込んだ。日本は両の目をキツク結び、ほろほろと透明な涙を絶えずその頬に滑らせている。噛みしめられた下唇がいつもの赤い色を失ってを失っていた。
 瞬時、後悔の念がギリシャに押し寄せ、興奮していた気持ちがどんどん萎んでいく。背中に回していた手を抜くと、裾を元の通りに戻してから彼女を捉えていた手も解き放つ。が、日本の両手にはしっかりと捉えられていた赤い跡が残り、その跡を微かに震えたギリシャの指がさする。
「ごめん……日本、もうしない……」
 馬乗りのまま日本の頬を流れる涙を両手でぬぐいながら、何度もあやまる。けれども流石に嘘だとか冗談だなんて言えない……。只自身は後悔で押しつぶされそうだし、それでも未だに猛っている自身が憎くて溜まらなかった。謝りながら濡れた日本の頬に自分の頬を寄せて泣きやんでくれるのをジッと待つ。
 日本が数人の男に襲われた、という話を聞いた時はもの凄く腹が立ったのに、結局自分はソレと同じ事をしかけてしまった。汚してはならない自分の絶対者を、自らで傷つけてしまう所だった。ただあんなにも思ってきた彼女を、不意に現れた男なんかに奪われたくなかったのかも知れない。幼稚過ぎる嫉妬心だった。
 やがて泣き止んだ日本は、上にのし掛かっていたギリシャをグイと押しのけると、床に置いてあった日本自身の鞄を引っ掴むと無言のまま扉の向こうへ小走りに消えていった。たった一人残されたギリシャは、俯きながら目線だけで穏やかな外を眺める。体育をしているらしい、楽しそうな声がコチラにまで響いてくる。やがてチャイムが鳴った。
 
 
 パタパタと廊下を駆けながら、変に動悸が激しくなった心臓が痛むのを感じる。人で溢れかえった廊下を、目当ての人物を捜しながら駆けていく。ただただ壊れんばかりに不安に陥った自分の心を、少しでも治して欲しかった。大きい殆ど知らぬ男なんかじゃなくて、ずっとずっと自分を慰め励ましてくれていた人物。
「中国さんっ」
 見つけた彼の名を呼ぶと、それは嬉しそうに兄は微笑みを返しながら振り返って自分の名を呼んでくれる。何もかもが変わらない姿。
 幼い頃はギリシャともずっと遊んでいたのに、彼はいきなり大きな男となって自分の前に現れた。正直、先程は怖くて溜まらなかった。前にあった事を思い出し、まるでまた頬が打たれたかの様に痛みすら生々しく蘇る。
「日本?」
 駆け寄ってくる妹の名を、訝しげに、それでも優しく問いかける兄に思わず勢い余って抱き付くと、周りがザワリと揺れるのを感じるが、今はそんな事も関係なかった。安堵で泣き出しそうになるのを必死で耐えていると、ポンポンと頭に手を置かれる。
「どうかしたあるか?日本。震えてるある。」
 穏やかな口調で、まるで動揺など無い。ただ自分の妹を宥めようと昔とまるで変わらない様子であった。日本はフルフルと首を振ればそれ以上訪ねようとはせずに、日本が「ごめんなさい」と微笑んで離れるまでずっとそのままの体勢でいてくれた。