学園パロ

今回は思い切ってロシア様からやっちゃいます(・∀・)ごめんこ
今オチだけ書き上げて吃驚したのは、なんでこんな事になってるかって事です。展開自重www
本当、これ、次何かけっていうんだYO。って感じです。ごめんなさい。
 
それから本物のロシアさんは寂しがり屋で愛情が拗くれてしまった人だとは思っているのですが、なんか書くとどんどん性格が変わってしまう……
もう仕方が無いのでそのまんま書き進めた結果がコレです。ごめんなさい。
 
 
学パロ
 
 
 寒々しく全てが灰色に映る部屋にポツンと座り、まだ幼いロシアはインスタントのスープをせっせと口に運んだ。何時の間に空が泣きだしたのか、窓は強い雨に打たれて音を立てている。
 こんな情景にはもう慣れていた。そう幼い頃からロシアは思い込んでいたのだろう、一体自分の胸を蝕む酷く陰鬱とした心地が一体なんなのか、全く気が付かない振りをしていた。そうすると全てが不意に安易に見えるからだ。複雑な事など何も無いのなら、人間や生き物の全てが、そして自分自身が簡易な物だとしたのなら、それは何よりも素晴らしい事だった。恐れも不安も唯自分の為だけにある感情となるのだから。
 殆ど野菜の入っていないスープを飲みながら、窓の奥に広がる真っ暗な世界に目をやった。月の明かりすら入らない雨の夜は好きだった。自分が隠れる様で、また自分から全てを隠す様で。
 暗い窓に映ったロシア自身は、まだ幼い姿形をしながらその灰色の瞳で自分をジッと見返し、唯笑いもせずに窓を叩いた雨粒の所為で泣いているかの様に見えた。本人はもう、そんな事など忘れてしまったというのに。
 
 
 学パロ ロシア編(17)
 
 下腹部にわだかまる鈍痛をどうにか抑えようと、日本はお腹に掌をあてがいつつまだ人の少ない朝の廊下をゆったりと歩む。くらくらと頭が重く、少し気持ちが悪い。登校の時はそうでも無かったのだが、急に生理入り一日目特有の不調が身体を襲う。
 フラフラと教室に向かって歩いていたのだが、どうにも足下が覚束なくその場でしゃがみ込んでしまう。兄から預かった生徒会の書類が折れないように胸元に抱え込んで、ちょっと休憩のつもりでそうしたのだが、今度は立ち上がるのが酷くおっくうになった。そもそも中国から預かったこの書類の所為だと、やはり生理特有の苛々を胸中に抱く。
 あの健康過ぎて風邪もひかない中国が、こともあろうか大切な書類を出す前日に38度を超す熱をだしてしまった。仕方がないのでその書類を朝早めに来てとっととイギリスあたりに預けてしまおうと思っていたのだが、歩くことさえ困難ではどうにも出来ない。
 座り込んだ両膝の合間に顔を埋めてこの鈍痛が去ってくれるのを懸命に待っていたその時だった、不意に浮遊感を覚え、腕の中に抱え込んでいた書類が音を立てて廊下に散っていく。
「あーあ、何か一杯落ちちゃったね」
 後ろからヒョイッと日本を持ち上げた主、ロシアは他人事の様にそう言ってにっこりと笑う。内心、その笑顔を見ただけで思わずウッ、と息を飲み込む程彼は苦手であるのだけれども、それ以上に今は貧血の方が重大で日本の身体は彼に反抗の意を示せるほど元気では無かった。
 貧血で顔色が悪く、その上まったく声も上げない日本を不思議に思ったのか、ロシアを日本を持ち上げたままヒョイッと日本の顔覗き込む。クッタリと虚ろな瞳で彼を見返す日本に気が付いて、流石のロシアも不意に笑顔を消し去った。
「……どうしたの?」
 不思議そうな口調でロシアが訪ねれば、酷く億劫そうな様子で日本は不機嫌に眉を顰めた。当然、理由は奥ゆかしく「刀と菊」な文化で育った我らが日本には言える筈も無い。
「……離して下さい」
 そう言い放ちロシアの身体を手で押しやって掴まれた脇腹から手を離させようとするも、体格の違いすぎるロシアにはかなう筈も無く、ただロシアはにっこりといつもの様に微笑むばかりだ。
「調子が悪いの?」
 微笑んだまま問うが、日本は眉を顰めたまま肯定も否定もしない。
「保健室に連れていってあげようか?」
 日本が返事をしないにも関わらず……否、日本が返事をしないのをいいことに、彼、ロシアは勝手に話を進めていく。勿論ロシアの申し出に日本は拒絶を示そうとするものの、日本が何か言うよりも早く、ロシアは落ちてしまった紙を全て拾い上げるとさっさと日本を肩に抱えたまま保健室へと向かった。
「はい、着いたよ」
 何度も降ろして欲しいと訴えたものの、結局最後まで日本はロシアに抱え上げられ保健室まで運ばれてしまった。にっこりと笑うロシアに対して、昔から散々兄に「ロシアとだけは絶対に関わるな」と言い含められていた事もあり、心配と強引さに対する怒りからか、少しばかり頬を膨らまさせて礼を述べる。心の中では礼を述べるのもまた理不尽だ、とごちっているのだが。
「じゃ、僕はこれで。この書類は生徒会の方へ持っていくから」
 いつからその書類が生徒会用の書類であると気が付いていたのか、ロシアはにっこりと笑って紙を胸に抱えると日本に背を向けて廊下を歩き出した。心の中で兄が言うほど彼は害が無いのでは……?と日本が思い始めた、その時。もう一度何かを思い出したかの様にロシアはクルリと日本を振り返った。それからやっぱりあの笑顔で言い放つ。
「そうだ。君のお兄さんが来られないんだから、当然この書類のチェックは君がやるんだよね?それとも君をわざわざ保健室にまで運んだ僕がやるの?」
 日本が「もしかしたらあの人は……」なんて考えたのが甘かったのだろう、日本の顔がピキリと固まった。それから苦々しく「分かりました、放課後生徒会室の方へ窺います」と珍しく意識した低音で答える。
 
 
 かくして放課後に日本が生徒会室に訪れ、そして本気で彼女は驚いた。なぜなら彼、ロシアが座って笑顔で日本を出迎えた上に、てっきり日本一人でやるのだと思っていた作業を、何故かロシアと二人っきりでやるらしいからだ。ハッキリ言って、一人の方がまだましだと内心でこっそり思う。
 兄が彼を嫌いだという先入観の前に、どうにもこのあからさまな作り笑いが苦手だった。書類は間違いをチェックするだけの単純作業なのだが、一切の会話も無いのが更に居心地を悪くさせる。放課後の室内にカサカサという紙の音だけが響く。
 机を向かい合わせてのその作業は、ちょっとばかり近くてやりにくい。
「あ、あの、今日はラトビアさん達いらっしゃらないんですね。」
 沈黙に耐えかねて日本が顔を持ち上げて問うと、ロシアは書類から顔を持ち上げずに笑った。
「そうだね。今日は僕から解放されて嬉しいんじゃない?」
 その返答に少々驚いて日本は顔を持ち上げたが、何と言って良いものか考えあぐねてまた下を向いてやり過ごそうとする。が、沈黙ばかりが痛くて、似合わず日本がどうにか話題を絞りだそうとした。
「……でも、いつも一緒に居て仲がよろしいですよね」
 幼い頃の成果か、日本得意の作り笑いを浮かべて当たり障りの無い事を懸命に考えて言ったつもりだったのだが、ロシアは一瞬キョトンとしてからプッと吹き出してから声を立てて笑う。その酷く無邪気そうな笑い顔を、日本は不安そうにそっと黒目がちのその瞳で見上げる。
「仲が良い?面白い事を言うね。ただ便利だから一緒に居るだけだよ。」
 日本はにっこりと笑ったロシアを見やったまま体中の動きをピタリと止めた。
「君だってそうじゃないの?人間関係なんて結局は利害の一致か力関係だよね。」
 そう笑って、まるでこの話題はここでおしまい、とでも言うようにロシアはまた書類に目線を戻す、が、日本はロシアを一心に見つめたまま目線を反らそうとはしない。そして
「あなたは可哀想な人」
 と、ロシアを見据えたまま、日本は確かにそう言い放った。瞬間、ロシアの笑っていた瞳が凍て付きじっとコチラを見つめていた日本を睨め付ける。
「それ、どういう意味かな?」
 口調ばかりばかに穏やかでその形相は酷く恐ろしく、先程まで漂わせていた滑らかな雰囲気まで全て消え去ってしまっていた。思わず日本はたじろぎかけるのだが、負けじと見つめる力を抜かない。その顔は窓から照りつけられるオレンジの夕陽に当たり、いつもどこかフワフワ人界から離れてしまっているかの様な彼女が、どうにもハッキリと存在していて、その黒い瞳から送られる重い色ばかりが浮き出た。
「そのままの意味です。」
 日本の台詞に、ロシアは無言で立ち上がるとその巨体をグッと伸ばして前に座っていた日本に詰め寄った。その為に、机の上に置かれていた書類が全て音を立てて床に落ちていく。そして日本が構える時間すら与えずに、その細い喉を右手だけでガシッと掴み力を込める。
「僕を侮辱するつもり?」
 再びにっこりと微笑んだが、日本の喉を掴んで締め上げる力を抜かずにギリギリと更に力を加えていく。声を発するにも締め上げられているから出る筈も無く、ただ赤い舌が酸素を求め口内でちらちらと動く。それでも苦しさ歪んだ瞳でロシアを見つめ返した。
 挑戦的とは若干言い切れないその瞳の色に、何故かロシアがたじろぎ思わず喉元から手を離す。と、日本は急激に入ってきた空気に盛大に噎せ返り机に一時つっぷする形となった。
「苦しかった?ごめんね。でも君があんまり変な事を言うからさ。」
 笑って言ったその言葉に、日本は自分の喉を押さえながらもキッとロシアを見上げた。その黒い瞳に灯ったその異様な存在感に、何故だか酷く惹き付けられる物を覚えて成らない。それは同時に小さな小さな砂粒ほどの恐怖心でもあった。不可解な、不可思議な、考えても答えが出ない哲学書を前にした様な、そんな恐怖心であった。
「……もう帰って良いよ」
 思わずこっちを見るな、と、怒鳴ってしまいたくなるのを押さえ込んでそう言い放ったのに、日本は微動だにせずじっとロシアを見上げる。その首には先程の自分の手形がクッキリと残っていて、力の差など歴然としているのに、それでも彼女はまるで怯む様子も無い。
「失礼します。」
 キッとこちらを真っ直ぐに見やりながら、彼女は自分の鞄を掴み部屋を後にする。机の上に散らばった未点検の書類を、ロシアは歪めた眉の下で冷たく見やる。が、どうにも何かが胸の奥に詰まって息がしづらく、そして酷く苛々としていた。
 その感覚が何だか全く分からなく、ロシアを不愉快にさせてならない。
 
 
「ただいま帰りました……」
 酷い疲労感を覚えて、日本は溜息と共に弱々しい口調で寝ている筈の兄に呼びかけると、「おかえりあるー」と彼はとても元気そうな笑顔で顔を出す。
「中国さん!?何をやってるんですか!?寝てて下さい!」
 慌てて靴を脱ぎ捨てて笑顔の彼に駆け寄るのだが、今朝微熱ではあるが、熱が出たなんて信じられない程に中国はピンピンして笑う。
「漢方と睡眠が効いたある!」
 ウキウキと嬉しそうに夕飯の支度をしている中国に、思わず日本は額を抑えて深い溜息を吐いた。あれだけ心配をしたというのに……と。その日本の様子に、中国は日本の顔を不思議そうに見やり、そしてあの痕を見つけた。
「お前、それ、どうしたあるか?」
 急に笑顔が消えた兄の様子に日本は慌てて顔を持ち上げ、そして自分の首に強く残っただろう痕を思い出し、思わず両手で首もとを隠す。
「あの……なんでも無いです。」
 取り敢えず出てきた言い訳に、思わず自分で溜息が出てしまう。勿論中国にそんな言い訳が通用する訳が無く、数歩で日本に近付くと、首を隠していた両手を無理矢理剥がし、そしてじっとその赤くクッキリと残った痕をジッと見やる。
「俄?斯(ロシア)あるな……」
 ボソリ、と告げられたその中国の台詞に思わず日本は身体を硬くさせた。恐らく朝日本に預けた書類の事を思い、直ぐにロシアだと思いついたのだろう。我が兄ながらその直感力には驚かされてしまう。たじたじとなった日本を、いつもは絶対愛しい妹には見せない恐ろしい目つきで見下ろし、クイと顎に指を当てて日本と目が合うように、彼女の顔を持ち上げた・
「俄?斯に他に何かされたあるか?」
 見たこともないその雰囲気に、思わず日本はたじろぐ。
「いいえ、何も……」
 困って首を振る日本の頭にポンと手を置いて、ようやっと中国はにっこりと微笑む。それでも、やっぱりその笑顔はいつもの見慣れたソレでは無い。
「そうあるか。それなら良かったある。………今度からは兄の言うことは聞く事あるネ。」
 最後にグッと顔を近寄せ、やはり少々怒気を含ませ中国が言い放つ、と、思わず日本は一歩下がって小さく唾を飲み込んでいた。それから中国は、パッといつもの笑顔に戻ると、「今日は担々麺あるー」とやはりいつもどおりに言いながら再び台所に戻っていく。
 残された日本は、思わず背中に垂れた冷や汗を感じつつ、重い溜息を一つ吐いた。
 
 
「何か用かなぁ?中国くん。」
 にこにこと微笑んだロシアの仮の笑顔に、やはり中国は虫酸が走る、と、心の中で吐き捨てた。下校の生徒が多い往来で待ち伏せて、人目すら憚らずに中国はロシアの行く先を立ち塞ぐ。
「昨日は我の妹が世話になったらしいあるね。」
 腕を組んで仁王立ちになった中国の体格は、ロシアのソレと大層な違いがあるにも関わらず、何故だか大きく見える。その表情は普段学校で見せているものと同じなのだが、落ちている影はその比では無かった。
「……それが?」
 ちょっとだけトーンを落として、ロシアは中国の言葉に返す。苛々としているのが、珍しく傍目にも分かった。
「我にちょっかい出すのはまだ許すが、日本に手を出したら許さねーある。」
 もしここにサイヤ人が居たのなら、この二人の身体を取り巻く気をカウンターの爆破と共に気が付いたのだろう。そしてサイヤ人で無くとも、その不穏な雰囲気に下校途中の生徒は一様に被害が無い様遠巻きに二人を見やった。
「君には関係無い」
 いつも緩やかな弧を描いている筈のロシアの瞳がうっすらと開き、その奥に潜んでいる灰色の瞳が真っ直ぐ中国を睨み据えた。
 と、その時だった。横断歩道の向こうから中国の名を呼ぶ聞き慣れた声がし、二人が同時に振り返り、驚いた様子の日本を見つける。慌てた彼女が、信号が青なのを確認すると身を翻し車道を駆け出した。
その事に気が付いたのは誰が一番先だったろうか、誰かが「あっ」と叫び、連鎖する様に誰もが声を上げて横断歩道を曲がってきた車を指さした。
 
 激しいブレーキ音が響いただけで、後はもう殆ど無音だった。振り返って迫り来る乗用車をみとめた彼女の黒い髪が美しく流れるのを、なぜこんな状況でかは分からないが、常軌を逸した程綺麗だと、思った。黒い瞳がその乗用車を見やっても、彼女の表情は別段崩れない。それどころか無表情のその顔は、まるで全てを受け入れるつもりの様でもあった。
 バンッ、と、聞いたことも無い様な破壊音が響くと、日本の小さな体が空を大きな弧を描いて飛んだ。ゆっくりとした世界に、随分長い間自由を得た様に空を舞うと、急激に重力を持ち日本の身体はアスファルトに叩き付けられる。うっかりその細い身体はぺしゃんこにでもなってしまうのでは無いか、という程に激しく固い地面に直撃した彼女は、声も出せずに見守る人々に向かいあの大きな瞳を見せもしない。瞼に遮断され、いつもの芯の強い瞳が見られない。
 一番始めに我に返ったのは中国で、その悲鳴じみた声色で彼女の名を叫んだ。その声で、やっとみんな我に返る。と、駆け出した中国の腕をパッとロシアは掴んで彼が日本に近付かない様にする。
「日本!日本、日本、日本!」
 普段だったら腕を掴まれただけでロシアに噛み付かんばかりに抗議するのだろうけれど、今はそんな事すら考えられないのか、ただただ自分の妹の名を連呼するばかり。その姿にハッとさせられ、思わず近くに居た生徒が日本に駆け寄ろうとするのだけれど、それをロシアが一喝して止めた。
「触るな!頭を打ってる」
 ロシアの言葉に誰かが「でも……!」と泣き声を上げた。一見怪我も無く見えるのだが、真っ白なセーラー服が、胸部からドクドクとずっとあふれ出す赤黒い血液で染まっていき、黒いアスファルトにも血溜まりをゆったりと広げていく。手足には擦り傷以外さほど大きな外傷は無いようなのだが、どうやら胸部を強く打っているらしい。もしかしたら折った肋骨が肺に刺さっているのかも知れない、その口の端から一筋血が垂れていた。否、舌を噛んだだけかも知れないが……
 ただ先程まで薄桃色をしたその頬までもが、今では重い死の色を伴って暗くそまっていた。閉ざされたその瞳すら微塵も動かない。
 藻掻いていた中国は急に全身の力を抜き、ガックリとアスファルトに両膝を着いて項垂れその両手で顔を覆った。泣きだしたのかと思ったのだが、ただ自失しているらしい。
 その姿を確認すると、急いで日本の元に駆け寄り身体を動かさない様に投げ出された手首に指を当ててそっと脈を取る。と、その身体にはまだ確かに脈があったのだが、気のせいか急激に体温が落ちている気がした。そう思った瞬間、自分で疑ってしまうのだが確かに胸が酷くざわつく。
 
 轢いてしまった人が呼んだらしい救急車は、存外速くやってきた。相当ショックを受けたらしくポツリと座ったままだった中国を無理矢理起こし、一緒に救急車に乗り込む。飛び交う分かりもしない専門用語に耳を傾け、遂に泣きだし妹の手を握り、その名を呼ぶ中国の横に、今度はロシアがポツンと座って眉を盛大に顰めた。
 胸がざわつく。その意味すら、もう自分には分からなかった。