学園パロ

メモ用に書いた筈なのにノリノリになった学園パロ(日本総受け)
 
 

第二話
 
 
細かな設定
 
 
日本、中国の父親は元々今二人が住んでいる本田荘の息子で、あまりお金持ちでは無かったが、
貿易業に着手し初めて成り上がりとなる。
そこで一番初めの奥さんと結婚。中国さん誕生。その時の妾の子が韓国さん。(三年生)
初めの奥さんは中国さんの出産の際に病気してしまい、死亡。
が、すぐに新しい奥さんを貰い日本を出産。
当然妾さんは次は自分が本妻になれるとばかり思っていた為に激怒。
本妻と妾の仲は最悪だったが、子ども達はかなり仲良し。
 
で、日本が中学生に入学して間もなく、両親は自動車事故を起こして帰らぬ人に。
中国さんは会社も今の豪邸も要らないから、壊れかけた本田荘で日本と二人で暮らしたい、と希望。
二人が大学を出るまでぐらいのお金を貰い、今の豪邸を妾さんに譲り二人暮らしを始める。
高校生になるとき寮よりも安いが結構ガタが来ている本田荘にドイツとイタリアが入居。
 
 
 
※ 書きたい所だけ書くためのちょこっとあらすじ
 
いつもの四人に加えてイギリスも交えて夕食。
イギリスは寮住まいだが、中国が背負って本田荘で手当をして学校には電話を入れておいた。
警察に男達を突きだしたりしていた為に時間が無く、日本の髪は未だ散切りなので、
翌日は中国と二人で学校を休もう、という話をしている。では。
 
 
「しかし英國はずっと鼻持ちならないムカツク奴だと思ってたある。見直したある。」
 水餃子をモムモムと食しながら、自分の委員会の委員長をケロッと罵った。
「ほぉ、オレはお前が妹バカのシスコン野郎だと思ってたが、その通りだったな。」
「それはほめ言葉として受け取っておくね。」
 中国とイギリスは二人ともニヤリ、と陰の落ちた顔で笑みを浮かべるとバチバチと花火を散らさせる。
 日本は中国の隣でニコニコとしながら、イタリアにおかわりのお米を盛ってやっていた。
 どうやら今酷く居心地が悪いのはドイツだけなのかも知れない…
「イギリスさん、後でお部屋にご案内しますね。」
 ヴェー といいながら嬉しそうにお茶碗を受け取るイタリアと笑みを交わしてから、日本が今度はイギリスに笑いかける。
 イギリスの頬にカッと朱が差したのは見間違いか……悪い考えを懸命に追い出しながらドイツは味噌汁を啜った。

 
 本当に怪我が無かったか、とか、役に立てなくて悪かった、とか、言いたいことは山ほどあるのに、イギリスの口からはいつも出てきてはくれない。
 故にただジッと布団を敷いてくれる彼女の後ろ姿を眺める事しか出来ない。歯痒くて、歯痒くて、死にそうだ。
「腫れ、引いてきましたね。」
 布団を敷いていた筈の彼女が、いつの間にかコチラをジッと眺めていた。思わず肩が跳ねる。
「…ごめんなさい。」
 きまりが悪そうに、その長い睫に縁取られた大きな瞳を伏せる。コチラを見るのを彼女がやめた事が、少しだけ悔しかった。
「なんでお前が謝るんだよ。謝るのはあの男達だけでいい。」
 出てくる台詞は意に反してぶっきらぼうで、きっと態度も彼女を傷つける。
「…でも、巻き込んでしまったのだし。」
「すきで巻き込まれたんだ。」
 ハッと日本は驚いた様に目を見開く。変なことを言ってしまっただろうか、と自分でも思わず己の口を塞いだ。
「…計画的な犯行だったんだろ。もっと気を付けろよ。」
 恥ずかしさを紛らす為に出てきた台詞はまたしても酷くぶっきらぼうで、再び『やばい』と思ったが、日本はくすぐったそうに少しだけ微笑んだ。
「私を狙うなんて、変な人たちでしたね。それではお休みなさい。」
 いいかえそうと思うより速く、彼女はスルリと部屋から出て行ってしまった。
 チッ、と虚しい舌打ちだけが室内に響く。

 
 
「よし!今日は一緒に寝るある、日本!」
 各々がもう寝間着姿になり、寝る支度をしていた時、不意に中国が笑顔で日本に告げた。
 え?とキョトンとする日本の隣で な!と声を上げるドイツの隣で いいなーとイタリアが唇を尖らせた。
「特別に今日はおまえらも一緒に寝るよろし。ただし日本の隣は我と意大利な」
 中国の台詞にドイツの肩がビクリと震えた。
 一緒の部屋で眠れる、という喜びでは勿論無くて、もしかして中国には自分が日本に好意を寄せているとバレてるのでは無いか、という戦きの所為だった。
 しかし本当の事を言うと、寧ろドイツが日本に好意を寄せているという事に気がついていないのは日本とイタリアぐらいである。
 勿論彼はこの事実を知らない。もし知っていたなら、恥ずかしくて覆面高校生になりかねない。
 周りから見れば、もう硬派云々では無く可哀想な人だ………
 
 川+1と小さな部屋に敷き詰められた布団を眺めながら、ドイツは胸が高鳴るのを感じずにはいられなかった。
 今日は心配したり戸惑ったり戦いたりときめいたりで、人生を2,3年すり減してしまったかの様だった。それでもこの結果なら全然okだが。
「消灯―」
 それにも関わらず、随分呆気なく部屋の電気が中国によって消されてしまった。
 暫く誰ともなしにモゾモゾと動く音が聞こえていたが、約3分程で早くも隣から寝息が聞こえてくる。

 それから1時間あまり経ってもドイツの目はギンギンに見開かれどうやっても眠れない。明日の授業はもう諦めた。
 スヤスヤと安らかな寝息が等しく聞こえる中、ふと誰かが囁いた。
「お前がどこかいっちまったら、きっと我はおかしくなっちまうある。」
 それが寝言であるか否か、ドイツに確かめる術は無かった。
 
 
 噂 というのは本当に凄まじいもので、部活着で飛び出していった中国の所為でドイツとイタリアは質問の嵐を被った。
 顔中傷だらけのイギリスや学校を休んだ日本と中国の話題が、昼ドラ以上の物語になっていて思わずドイツの眉間に皺が寄る。
 が、そこはイタリア!筆を持っている時以外では見られない様な機敏な手の振りを加えながら、昨日の出来事を一人一人に伝えていく。
 イタリアの話はこうだ。ナイフを自分の首にあてがった日本の前に飛び出してきたドイツとイタリアは目の前の敵をバッカバッカと薙ぎ倒し、全員倒した後中国を呼んだ。イギリスは卑怯にも武器で後頭部を殴られた。
 ほんの小さな一部を除けば正にその通りだった。しかしその噂にはまた尾ひれ葉ひれがくっついていくのはどうにも防げない事らしく、次の日にはドイツはあやまって3人殺した。だの、イタリアは泣いていて役に立たなかった(泣いてはいないがイタリアの話より真実に近い)だの、中国は全員の肢体を切り落として瓶に詰めた、だのと、面白いように話が付け加えられていく。
 
 そこまでは笑い事で済むのかも知れないが、日本が自分から男達を誘った、というのには思わず青筋が立ってしまう。
 只でさえあの美しい黒髪を切られ(自分で切ったらしいが状況的に切られた様なものだ)ムズムズと居心地が悪そうな彼女に、この噂だけは耳にして欲しくない。同じクラスならもう少しフォローも出来るだろうに…
 ハァ、と重たいため息を吐くと教室に一人で座っている彼女を思い歯痒くなった。
 
 
 元から色気が無く、あの長い髪が唯一の女の子らしさだったのに今では短くクリクリで、自分が男の子にしか見えない様な気がして、日本は恥ずかしくなった。噂は立っているだろうに、誰もその事に触れてこないのが逆に恐ろしい。
 早く授業が終われ と念じれば念じるほど時間はゆっくりになる気さえする。
 やっと四時間目終了のチャイムが鳴ったのと同時に、日本はみんなで食べようと思い作ってきたお弁当箱を抱えて教室を飛び出した。
 向かう先の屋上にはきっとまだ誰も来ていないだろうけれど、早く見慣れた顔を見て落ち着きたかったのだ。
 
 
 が、三年の廊下に差し掛かる頃幾人かを通り過ぎた瞬間、ふと喋り声が耳に入り思わず日本の足を止めさせた。
 彼女に向かって発せられた台詞では無かったが、彼女を狼狽させるには十分な会話だった。
  あ、今の子  でも自分から誘ったって噂だよね。  という、たったそれだけの会話。
 それでも自分の事だと瞬時に理解が出来たし、それがどれだけ自分の名前を傷つける噂かも理解できた。
 足を止めた日本は、強く強くお弁当箱を抱きしめながら自分が動けなくなるのを感じた。目の前がグルグルと歪む。
 昨日あんなにも恐ろしい目にあって、どうしてあんな事を言われなければならないのだろうか? 奥歯が微かに震えた。動き出さなくては泣いてしまう、とは理解していたけれどもう足は動きそうもない・・・
 
 と、その時ボフン、と角から曲がってきた誰かが自分におもいっきりぶつかった。
「あっ…すみ、ません…」
 小さく謝った言葉が震えるのを覚えたが、下唇を噛んで涙が出そうなのは耐えた。
「あれ?君確か中国くんの…」
 顔を持ち上げて思わず心中で しまった! と叫び声をあげる。ぶつかってしまった主は、あのロシアだった。
 あの涼しそうで裏がありそうな彼を、どうも自分は好きになれなかったし、彼も自分を嫌っている自信さえあった。
 きっと何か言われる。もし言われたら、自分は絶対泣いてしまう。
 
 一時、ロシアはジッと日本の顔を眺めた後、不意にその大きな右手をスッと日本に向かって伸ばした。
 ビクリと震えて日本は目を瞑り畏縮した。が、彼の手は日本の頭に優しくポン、と置かれただけである。
 その事に驚いた日本が再び目を開けると、ニコニコと笑ったままのロシアが2,3度日本の頭を撫でただけでそのままフイッと向かっていた方向に姿を消した。
 想像だにしなかったその行動に、日本は暫く呆然としつつ、もしかして自分は慰められたのではないか、という恐ろしい考えまで浮かぶ。
 バカにされたのか、本当に慰められたのか定かではないが、ロシアのお陰で再び足は動き出しそうだった。
 
 
 日本にとって本日初めて気が許せた状態は、長くは続かなかった。
 放送で委員会委員長及び会計の呼び出しがかかったのだ。来年度の予算が決定される大事な会議の説明らしい。
 全て無くならなかったお弁当箱を残して、中国もイタリアもドイツも屋上を後にする。
 ごめんな と申し訳なさそうに兄が笑うものだから、全然平気です、と思わず笑い返してしまった。それは酷い嘘だった。
 いつまでも一人で屋上に居るわけにはいかないので、さっさと弁当箱を片付けると教室に向かう。
 本当は先程の噂がどこまで広がっているのか、心配で仕方がない。他人にどう言われても気にしなければいいのだけれども、きっと一昨日の事を思い出す。
 あんな酷い思い出、あの衝撃は母が死んだ時以来だと体が震えた。
 三年の教室の前を何も聞こえない様に出来るだけ早足で通り過ぎると、滑り込む様に自分の教室に入った。一瞬、教室が静まる。
 
 あ、嫌な感じ。そう思うのと同時に体が微かに震えた。
 きっと知ってるんだ。あの噂を。そしてまだどんどん広がっているに違いない。
 
 出来るだけ平静を装いながら自分の席に座ると、自分を落ち着かせる為に読んでいる途中の本を引っ張り出す。昼休みはまだ長い。
 後ろで誰かがコソコソと小さな声で喋り、直ぐに笑いが起きる。…違う、きっと自意識過剰だ。自分に言い聞かす様に心中で何度も呟いた。
 自分の家系の事で陰口なんて言われ慣れてるじゃないか。なんでも無い。何でも無い。と、何度も何度も考えるのに、嫌な考えは止まらない。
 押さえつけられた時の手首の痛みが、不意に蘇る。ビクリ、と肩を震わせ、懸命に本に目線を落とす。
 それなのに何度読んでも本の内容が一切頭に入らない。グルグル渦を巻きながら意識が遠のいていく様だった。
 泣いてしまう。情けなくて潰れてしまいそうだ。ここで泣いてしまったら本当に情けない。
 下唇を噛みしめて、こぼれ落ちそうな涙を必至に耐えていた、その時、未だかつて聞いた事の無い様な不協和音を立てて教室の扉が開いた。
 
 
「日本っ!」
 教室に入ってきたのは、韓国だった。
 怒鳴られる様に名前を呼ばれた日本は、思わず飛び上がる様に立ち上がる。
 韓国の眉はグッと持ち上げられ、眉間にはドイツ並みの皺が寄っていて、並んだ席を無視する様にズンズン日本に向かってきた。
 まったく彼に怒られる謂われは無いのだが、日本はその様子になぜか怒られると思った。だから、抱きしめられた時は死ぬほど驚いた。
「か、韓国さん…?」
 教室中がコチラを見ている。もう、恥ずかしくて自分の顔が真っ赤になっていくその過程さえ分かりそうだ。
「一昨日兄貴から電話貰って、オレすっげぇ心配したんだぜ!ああっ!本当に髪が切られてる!」
 まるで吠える様に自分の言いたい事を、彼は昔から言ってしまっていた。羨ましい、と、昔から感じていた。
 ギュウギュウ抱きしめられたままやっとの思いで日本が喋る。
「し、心配して下さったんですか?」
「オレはお前の兄ちゃんなんだから、当たり前なんだぜ!」
 その物言いはまるで心外な事を言われ、傷ついた!という感じだ。
「本当は朝のうちに来ようと思ったんだけど、数学の田中につかまっちまったんだぜ!」
 拗ねた子どもの様な口調に、思わず日本から笑みが零れる。
 それから不意に韓国は日本から離れると、そのほっぺたをムニ、と優しくつまむ。
「一回殴られたって聞いたけど、傷残って無いな。良かったんだぜ!恐かったな!」 子供の時と同じ様に彼が笑う。妾の子だと散々日本の親族に陰口を叩かれたりしたのに、彼はその笑顔を崩した事がなかった。
 はい、凄く恐かったです。 と答えて笑おうとして、笑顔と同時に涙がこぼれた。
 さっきあれ程耐えていた涙が、今度は知らぬ内にポロリと流れ落ちた。あ、と呟いたのは日本か韓国か。
「あ…違うんです…恐かった、ですけど、あの…これは……」
 支離滅裂な言葉だけが日本から漏れる。この涙は一昨日中国に抱きしめられた時に流した涙と同じだと伝えたいのに、言葉が出てこない。
 日本はこの頼りない二人目の兄を見て、心の底から安堵してしまったのだ。それで零れたのだから、安堵の涙だった。
 わ、わ、わ、わ、と韓国は本格的に泣き出してしまった日本の涙を懸命に自分の裾で拭き取っていく。
 ゴシゴシ擦られて痛かったが、昔転んで泣いた自分に彼が同じ様にしてくれた事を思い出して、酷く楽しかった。