学園パロ

メモ用に書いた筈なのにノリノリになった学園パロ(日本総受け)


学園パロ  第四話
 
 
設定
 
なんかお兄ちゃんの設定を練り込んで一人にやにやしてました。
長男(以下中国 w)は入学当時主席だったりしたらいい。しかも無表情が常だったりしたら死ねる。
その上他人には割と冷酷だったらもうサンディエゴで愛を叫べる。自分で作ってくパロなのに自分で萌えちゃう……
で、そんな冷静沈着体質で一年生を過ごし、みんなに「あの中国さん」的になって(なんだそれ)
それなのに妹が入学してきたら、教室とかではそのままなのに、妹と一緒だとニッコニコとかさー死ねる死ねる。まじ死ねる。
しかも『シスコン』というレッテルを喜んで受け入れている彼に恋が芽生える。(私から中国への)
 
 
おロシア様はバルト三国を引き連れる裏番長で御座います。
彼が笑えば泣く子も黙り、吠える犬も泣き出す始末。因みに殆どニコニコしていらっしゃるので、
大抵の犬は彼を見た瞬間シッポを巻々、ハウスと言われるまでなく我が家に逃げ込みます。
書記なのに、仕事は全部バルトに任せます。
その代わり不良グループ壊滅とか平気でやってのける!そこに痺れるあこがれるゥ!
 
 
フランス兄ちゃんは軟派な生徒副会長。
三年生なのに「会長は面倒くさいー」と言って嫌がり副会長になりました。
グラマーなパツキン(古)美女が大好きで、やはり基本はボン!キュッ!ボン!が大好きです。
だから日本を見たときは「A〜B!」とか思ってました。
上記二名はやっぱり寮生活ですが、兄ちゃんは夜中殆ど寮に居ません。残念ながら。
 
日本の自信無さは妾さんの悪口から来てるよ!日本は金槌だといいよ!
 
 
 
あらすじ
 
良い感じになったイギリスと日本に中国さんは危機感を覚えました。私も危機感を覚えました。
本当、なんかノリノリになってついつい私の妄想の中で日本と英はそのままAまで縺れ込みました。
流石にダメだよ!これからもっと他の国家に頑張って貰わないと! と、中々どうして三話の感想書いちゃった。
 
今日は帰りに兄が日直(三日制だから二日目だよ!)で、でも「一緒に帰るある!」とか言われた日本は仕方なく図書館で時間潰してる。
っていうところからですどうぞ。では。
 
 
 
 『桜の園』著者はチェーホフ。
 そっとその本を手にとって、別段興味も無いけれどパラパラと捲った。兄はまだまだこなさそうだし、自分の読みたい本はもう選んでしまった。
 と、不意に自分の頭の真上から、声が降ってくる。
「飢えた犬は、肉しか信じない」と。
 聞き慣れた、とは決して言えないが、確かに数回聞いたことのある声に、思わず日本は身構える。
 何時の間にこんなに近くまで寄ってきていたのか、そこには日本の目の前にあった本棚に右腕を寄りかかせて、上からコチラを見下ろしているロシアが居た。
 ヒッ と出かけた声を無理矢理押し込んで、思わず間の抜けた笑顔を送ってしまう。
「こういう本に興味があるの?」
 にこやかに送られた笑みに、フルフルと控えめに頭を振ると手に持っていた本がバサバサと音を立てて床に落ちてしまった。
 けれども彼は、全くその事に興味を示さずに、日本の手に持たれていた『桜の園』をそっと奪うと本棚に戻してしまう。
「そうだね、あまり君には合ってないと思うよ」
 固まったままの日本をよそに、落ちてしまった本を、その長身を曲げてわざわざ本を拾い集めてくれた。
「あ、すみません…」
 慌てて日本も屈み拾おうとした時、不意に彼の大きな手がパッと日本は右手を掴まれ、思わず目を見開き彼の灰色の瞳と向かい合った。
「君の噂、色々聞かせて貰ったよ」
 グッと顔を近づけてきて囁いた彼から逃れようとするも、掴まれた右手の為に退くこともままならない。
「噂なんて、どうせ真実はほんの一部だろうけどね。でも信じちゃう本当に馬鹿な奴は居るんだ。」
 と、彼は一見穏やかな笑みを浮かべているが、日本の首筋になにやら薄寒いものを感じ、思わず肩をすくめた。
「な、何を」
 一体彼は何が言いたいのだろうか?
 眉間に皺を寄せつつ声を小さいながらも荒げると、彼の笑顔が不意に解かれた。
「君のこと、そういう目で見てる奴が居るって事だよ。」
 掴まれた右手が少しだけ痺れる。灰色の瞳が恐くて思わず目を伏せてしまった。
 が、顎を掴まれて上を向かされて又再びあの灰色の瞳とぶつかり、足が軽く震え始めたのに気が付いた。
 街に居る不良とかは何ともないのに、どうしても彼だけは酷く恐ろしくて、あの笑顔だけは向かい合いたくは無い。
「その髪の毛、男の子みたいになっちゃったね」
 と彼がクツクツと喉を鳴らしながら笑い、その一言に日本の顔にカッと赤味が走り唇を強く噛みしめる。
「離して下さい」と叫び声を上げてしまいそうになった時、背後から聞いた事も無い程低く冷淡な声が響いた。
「離せ」と。
 日本とロシアが同時に振り返ると、そこには顔に陰を落とした中国が、仁王立ちのまま無表情で二人を見下ろしている。
「なんで?」
 日本が中国の名前を呼ぶよりも早く、目の奥が笑わない笑顔になり問いを返した。掴まれた右手も顎もそのままで。
「何してる。」
 問いを問いで返す中国の鋭い声が閑静な図書館に響き、周りの好奇な目が一心にコチラに向かわれる。
 ロシアが中国に注意を向けた隙をぬい、日本がその右手を振り解き慌てて立ち上がり中国の近くへ寄った。
「別に。ただの忠告だよ。」
 緊張感の抜けた笑みを浮かべながら彼もよいしょ、と立ち上がった。
 160p代の二人には(中国は170とさばを読んでいる)思わず圧迫感を感じてしまうが、中国は微塵もひるまない。
 ジッと睨み合った二人が、無言のまま固まるなか、日本が中国の服の裾を引っ張り訴えた。早くここから退いてしまいたい。
「あの、中国さん、本当の事です。何もされていませんから。」
「…日本」
 唇を尖らして日本の顔を見つめ、ふと中国は諦めた様な顔をし、もう一度ロシアを見て先程掴まれていた日本の右手を掴み踵を返してズカズカと歩き出した。
 どんどん進んでしまう中国に手を引かれながら、ふと振り返るとロシアが二人に向かいニコニコ笑いながら手を振っていた。
 
 
 携帯を片手に、フランスは盛大にため息を吐いた。
 折角の日曜日だというのに、女友達はおろか、恋人達も全員ダメだなんてあんまりだ!(彼の恋はきっと全部全力です。)
 そうだと分かっていてもショッピング街についつい足が向かってしまうのだから、自分の女好き(美しいなら男でもok)は我ながら素晴らしいと思う。
 最近なんだか知ってきた様だが、イギリスなんてーのは少なくとも後3年は恋愛の浮き浮きなんて分からないだろう。
 
 そんな事を考えながら向こう側から歩いてくる女の子全員に色目を使いつつ歩いていると、ふと人波の向こうから知った顔がヒョッコリ覗いていた。
 ラッキー!とフランスは一つ口笛を吹く。ちょっとした暇つぶしにはなるかもしれない。
「よっ!イタリア!」
 ガバッと右手を挙げて挨拶すると、それまで右側に居た小さな何かと楽しそうに話していた彼はコチラに顔を向け、パァッと光を放った。
「フランス兄ちゃん!」
 15年前から変わらない幼い声音で、嬉しそうに自分の名前を呼びつつまとわりついてくる。
「なんだお前、彼女か?ふーん、中々可愛いじゃ……」
 可愛いじゃねーか、と言おうとして、思わず全ての動作を止めてイタリアの隣に居た少女を見やる。
 あっれー?確かこの子は中国の妹じゃなかったか?それにアメリカが大層ご執心で、近頃イタリアと仲の良いドイツとかも……
 瞬時に頭の中で『高校二年生男子の惨殺死体、樹海で発見!痴情の縺れか?!』という見出しの下に、いつもの阿呆面でピースを送りながら遺影になってしまったイタリアの顔が浮かぶ。軽く、楽しく、健全に!がモットーのフランスは思わず少々仰け反った。
 もしかしてコイツ、バカな癖に(でも良い奴)オレより危ない恋いをしてるんじゃないか!?等と、思ったり。
「うん、可愛いでしょー日本っていうんだよ。」
 フランスの苦悩も何処吹く風!イタリアは満面の笑顔を湛えつつ隣の少女を、イタリアより日本の周りの恋愛事情を周知している男に紹介してやった。
 うんうん、そうかそうかーと固まった笑顔でフランスが頷く。イタリアの隣の少女はイタリアの言葉に真っ赤になっていた。
「それで。今日はどうしたんだ?デートか?」
 最期になるかもしれないから、存分に話しておこう。バカだったけど、お前は良い奴だったよ。と、一人フランスは胸中で既に亡き人となったイタリアに花束を手向けた。
「違うよー日本が女の子っぽい服が欲しい、っていうからオレ一緒に付いてきたんだ。」
「ちょっ!イタリア君!内緒だって言ったじゃ無いですかっ」
 ぽよよん、といつもと同じ笑顔のまま緩くフランスと話していたイタリアに、今度は顔を真っ赤にした日本が慌ててイタリアの服の裾を引っ張り黙らせる。
 おや?とフランスが首を傾げた。どうやらデートって言う感じではない。それどころかまるで、そう、女友達だ。
「あ、そっか!違うよフランス兄ちゃん!女の子の服じゃなくて、あの、ええと、あれ!デパートの上の遊園地がね……」
 はいはい、とフランスは適当にイタリアをあしらい、にっこりと日本に笑いかけた。一瞬凄い慌てたが、もしかしなくても最高の暇つぶしじゃないか!
「ピグマリオンごっこだな。そういうのはオレの方が得意なんだ。」
 え?と目をまん丸にした二人を取り残し、フランスはサッと呆けている日本の右手を掴むとその指先に唇を落とした。
「三時間でいい!どこに出ても恥ずかしくない女の子に仕上げてみせる!……Princess」
 芝居の台詞を多少変化させて朗々と述べてから、パチリと右目を閉じて日本に取っておきのウインクを送ると、一瞬の困惑の後直ぐに少女は顔を真っ赤にさせた。
「交渉成立だな!それじゃぁお前等の姫様は少々預からせて貰うぜ。お前はデパートの屋上の観覧車にでも乗ってな。」
 からかい口調でペシリとイタリアの額を一度叩くと、グイッと日本をエスコートしつつ、フランスは華麗に人波を避けていく。
 勿論、そんな芸当を持っていないイタリアはたちまち人波に揉まれ、数秒後には小さく「にほーん!フランス兄ちゃーん!」という悲痛な声が聞こえるのみとなった。
「日本、だったな。オレの事はフランスって呼んでもらってかまわない」
 目を白黒させて、未だに状況が分かっていない少女に笑いかけると、礼儀正しい性質なのだろう、はい、分かりました。とキチンと返してくる。
「そうだなーまずは洋服か。」
 チラリと少女の服装を見ると、白いシャツにジーパン、それから運動シューズと別段センスは悪くは無いが女の子、というよりもボーイッシュな格好だ。
 一番に入った店は、大抵女の子を落とすときに使わせて貰っている店。勿論、ブランド店だ。ゴテゴテでもなく、かといってシンプルすぎない所が気に入っている。
「そうだなぁ。女の子っぽい、っつったらやっぱりワンピースだな。この子に似合う服と靴、持ってきて。」
 優秀な店員は見慣れた客に笑顔で頭を下げると、ポカンと呆けている日本にいくつかの服を持たせると試着室に押し込んだ。
 
「フッフランスさんっ…」
 小物を選んでいたフランスの背後から、小さく泣き出しそうな声がしたのは数分も経ってからだった。
 すっかり変わった彼女を思いパッと振り返ると、日本は試着室に付いているカーテンから顔だけを出してプルプル震えている。
「それじゃぁ見えない。」
 ブンブンと風でも巻き起こりそうな程に頭を振る彼女を、笑顔で宥めると、眉毛を八の字にして 笑わないで下さいね と真っ赤になったままコチラを上目遣いに見上げる。ハッキリ言って初めてのタイプ。
 思わずその顔を数秒見つめていた為に返事が出遅れたが、慌てて取り繕うと、日本はおずおずと試着室から出てきた。
 真っ黒で胸元に控えめなリボンがあしらってあり、裾はまた控えながらヒラヒラと揺れていた。そこから伸びた細い足は黒のタイツに覆われて、足下には彼女にぴったりなワインレッドの愛らしいパンプス。
「あの…変、ですよね?」
 上から下まで見て、また下から上までを2~3回繰り返していたフランスに、日本が不安げな声をかけた。大きな瞳がゆらゆら揺れている。
「いや、上出来だ。」
 勿論、本心だ。いまだに顔を真っ赤にしたままの少女の頭に、真っ白な花が付いた髪留めを留めてやると、先程から持って待っていた白いコートを着させてやる。それから彼女の手を持ち、店員の声を聞きながら店を一つ後にする。
「あ、あの、フランスさん。やっぱりこの格好恥ずかしいです…」
 慣れないヒールにおぼつかない足下の少女をエスコートしつつ、次なる店に向かい歩いていくと、彼女が小さな泣き出しそうな声で呟く。
「なんで?みんな振り返ってるのに。」
 だからです。きっと変なんです。 と蚊の羽音の様な囁く声で彼女は言うので、頭を巡らせて次なる店に思いを走らせた。
「じゃぁ、次の店行こう。」
 未だ午後一時だし、まだまだ連れ回したって中国に毒薬を飲まされる事も無いだろう。
 次入った店で爪を、そして薄化粧(で、十分)を施してやり、一面の巨大な鏡の前に立たせてやった。戸惑いを表した彼女の耳元で一つ、気障な言葉を囁く。
「あ、あの。本当に有り難う御座います。でも、私お金が」
 鏡の前に立ったままの少女が自分を振り返り、不安な声を発したのを右手の人差し指でそっと遮った。
「おっとお嬢さん。こういう時お金をレディーに払わせるなんて恥かかさせないでくれよ。」
 グイッと顔を近づけると、顔を真っ赤にさせた少女が半歩身体を引かせてまたコチラを見上げる。
「勿論、対価は貰うけどな。」
 少女の柔らか頬を、まるで陶器か何かを扱うかの様にそっと触れると、またその右手を掴み店を後にした。
 今度の目的地は店では無い。歩きにくそうな彼女に心を配りながらショッピング街を抜け、人通りの少ない道に入り込んでいく。
 後ろの少女の顔を時折振り返れば、その顔が不安で少々陰っている。つい最近噂になった一件の様な事があったなら、当たり前といえば当たり前だが。
「到着」
 自分がピタリと足を止めると、彼女も顔を持ち上げて小さく驚いた声を上げた。
 先程まであんなショッピング街だったのだから、こんな公園がひっそりとあった事を知らなかったのだろう。公園といってもまばらな木々と古いベンチ、それから普段殆ど人が居ないボートと池。
「初めて来ました。私の家この近くなのに。」
 先程までの不安そうな顔と打って変わって、少女の顔に今度は嬉しそうな色が混ざり、その声も心なしか弾んでいた。
「そりゃ良かった!今日の服代、及びその他諸々のお代は、オレとアレに載って貰うこと」
 思いもがけず、自分からも酷く弾んだ声色が飛び出し思わず苦笑を浮かべてから、手で池の端にくっついたボートを指し示した。
「えっ…そんな事で良いんですか?」
 驚いた真っ黒な瞳がコチラに向かい、細く長い指がその口元を覆う。
「そんな事?オレにとっては“そんな”なんて区切られたく無いな。せめて“よろこんで”と言ってくれ」
「……。よろこんで」
 少々何かを考えた仕草をした後で、とても微かだが本日初めての笑みをそのふくよかな唇に浮かべ、ハッキリとそう言った。
 
 足下に気を付けながら、初めての経験なのか怖々と、それでも楽しそうに彼女がボートに乗るのをエスコートし、木々が無く夕焼けた空が見える所まで舵を切って漕ぎ出でる。
 水をかく度に、彼女が幼い少女の様に歓声を上げて周りを泳ぐカモ等に目を配る。少々肌寒いが心地よい風に吹かれ、彼女が短い髪を掻き上げる。
 後は隣に座って2,3甘い言葉でもかければ終りだなぁ。なんて思いながらフランスがゆっくりと腰を上げると、日本が不意にパッと顔を持ち上げてジッとフランスの顔を、その黒く美しい双眼で射抜いてからそっと囁く様に呟いた。
「初めてお会いした時から思っておりましたが、フランスさんの髪、美しいですね。」
 そう言って、彼女は今まで見たことも無い様な美しさで微笑んだ。ラファエロの聖母よりもずっと暖かいのに、どこか絵画じみた美がそこにあった。
 夕焼けに焼かれた真っ黒だった髪が、ほんのりと茶色がかり、暖色に彩られた頬は気品さえ漂わす。
 ああ、あなたの方が美しい。 とかいつもの調子で言えばいいのだろうけれども、半開きになった口からはなんの言葉も出てきはしない。
 と、不意にボートが杭か何かに引っかかったらしく、腰を上げかけたフランスは盛大にバランスを失った。
「ッフランスさん!?」
 慌てた日本が、思わず彼の手を取るも時既に遅し。しかも最悪な事に、二人同時にまだ随分冷たい池に、音を立てながらボートから転がり落ちてしまった。
 幸い、足が池の底に付いたから取り敢えず横でアブアブと暴れている彼女を抱えてボートに戻してやった。
「だっ大丈夫ですかっ!」
 びしょ濡れになった日本が、未だ池の中に居るフランスに呼びかけるが、勿論大丈夫な筈が無い。またボートをひっくり返さない様に慎重にボートに戻ると、そうとう動揺していたらしい日本は濡れたハンカチで自分の額を拭いた。あーあ、相当だせぇ。
 これはもうどう考えてもダサ過ぎる。と泣きたくなりながら服の裾を絞っていると、後ろで誰かが吹き出した。
 誰か、というのは勿論一人しかいないのだけれども…驚いて振り返ると、自分の口を覆いながら日本がクスクスと笑っている。それは全く想像さえ出来ないだろう光景だった。
「す、すみません。でも、おかしくてっ…」
 あはは、と声を上げ、楽しそうに目尻に浮かんだ涙を手で拭いてまた笑い声を上げる。
「私、こんな体験初めてです。」
 そう彼女が笑うものだから、なんだか濡れ鼠になった事も随分愉快な事に思えて、思わず自分も笑い出してしまった。
 
 互いに家(フランスは寮だが)が近いものだから、びしょ濡れのまま二人は家路についた。酷い寒気がするが、知らない振りをして通す。
 もう幾分暗くなってきた道中、彼女は自分に慣れてくれたのか良く笑ってくれた。只残念なのはその顔が夜の暗さで見えない事。
「あ、ここです。」
 彼女が止まった先にあったのは、もう灯りのともったおんぼろな荘だった。
「それじゃぁ。またいつかお付き合いを、mifnonne tu」(可愛いあなた) ← あってるかどうかは不明だよ!
 はい、と彼女が笑った。それから彼女に背を向けて歩き出した後、不意に自分を呼び止める声がして振り返ると、少し小さくなった彼女が右手を大きく振ってから
「今日はデートみたいで楽しかったです」と言った。自分も手を振ってから笑顔を送った。
 それから彼女が自分の家に入るのを見送ってから再び帰路につきながら考える。
 
 デートみたい、じゃなくてデートのつもりだったのになぁ。と。