学パロ
メモ用に書いた筈なのにノリノリになった学園パロ(日本総受け)
※ 日本は女の子です。後年齢は実史をまったく考慮してません。
それからここに登場した人物のみ設定公開です。
学パロ
第六話
設定
あぁー!宣言してから学園祭と体育祭では体育祭の方が先だという事に気が付きました。orz
そんな訳で、この学園では体育祭の前に学園祭をやります。(超強引)
日本のクラスの出し物は『浪漫喫茶』
勿論、男のロマンでも腐女子の浪漫でも無く、大正浪漫!
女の子は袴姿とか、男の子は明治時代の学生姿っぽかったり書生ぽかったり。まぁ、私の趣味です。
クラスメイトに貸衣装屋の子がいる、とか無茶を言ってみます。
日本はウィッグと貸衣装の赤い袴、浪漫ブーツ(何ソレ)を穿き、お茶をお出ししますよ!
ではー
「可愛い!」
朝イタリアに言われたセリフろ同じセリフを言いながら、歩く日本の後ろをアメリカが付いてくる。
「アメリカ君、お店の中を歩き回らないでください。」
ついつい咎める口調になりながら、日本は頼まれたお茶と菓子をお客様に運ぶ。
初めはこんな格好恥ずかしかったけれど、何故かこうも店が繁盛してしまうと、一々恥じても居られない。
今日はこの学園の最も盛り上がる季節、学園祭の一日目なのだから。
その大切な一日目の午前、直ぐにアメリカに捕まり、というより一人で店にやって来て片手でショートケーキをムシャムシャ日本を追いかけてくる。
「ねぇ、今日は空いてないの?」
「今日は空いていません。」
唇を尖らして拗ねるアメリカを余所に、日本は手に持ったお茶の入ったお盆にコップを並べていく。
「…明日は空いてますよ。」
珍しく折れた日本が、そっとアメリカを見上げて言うが、今度はアメリカが額を手で覆い嘆く。
「明日はダメなんだよ。委員会でね…サボってもいいけど後々のイギリスの雷を考えるとうんざりするよ。」
そう言えば、小さい頃彼等は兄弟の様に育ったのだと、誰からか聞いた事があった。それが今でも続いているのだろうか。
あまりの凸凹っぷりに、自分と兄の事を棚に上げ日本は思わず微笑んだ。
と、その瞬間、右足に何かが引っかかり盛大に転んでしまいかけ、後ろを歩いていたアメリカに抱きかかえられた。
が、日本は顔を真っ青にして目の前に座っていた男の人に目を向ける。
床にぶちまけられたジュースで、ズボンの裾を少々濡らしてしまった…。
「ご、ごめんなさい」
床に膝を付いた状態で、胸元から白いハンカチを取り出しかけて、その手を不意にアメリカに掴み挙げられる。
驚いて目を瞠り後ろの少年を見上げると、その蒼い瞳はつまらなさそうな色を宿している。
「なっ…アメリカ君、離して下さい!」
「そんなヤツ、構うことは無いよ」
ちょっとだけ小首を傾げ、唇を尖らしてフイッと濡らしてしまった男の連れに目を向けると、目が合った茶色い髪をした男は目線を反らす。
「だって、日本に足引っかけたのコイツだもの」
立てた親指で日本にも分かるように、先程目を反らした男を指さした。
「なんて事言うんですか!もしそうだとしても、それで一体どうなるっていうんですか?」
男二人が立ち上がろうとするよりも早く、日本が声を荒げやっと立ち上がり掴まれた手を払いのける。
「そりゃぁ…そこからこじつけて君と遊ぶ為だろ?」
立派なナンパだ!どうして分からないの? と大袈裟に両手を広げ、眉を八の字に曲げてアメリカは不思議そうな顔をした。
が、勿論日本にその理論は簡単には通じない所が、兄たちの悩みの種であり日本の可愛い所ある。と思わずパンダ的なモノが少々乗り移っちゃったよ。
兎にも角にも、日本はアメリカからそっぽを向くと、先程ズボンを濡らしてしまった男に向き直り頭を下げる。
「いいよ。気にしないでよ。」と、男達は自分達の悪事を指摘されたのにも関わらず、人の良さそうな笑顔を取り繕って謝る日本に顔を上げるよう促す。
その男の指先が日本の白い手に触れかけた時、ベシャリと何か白いモノが男の額にぶつかった。
アメリカが手に持っていた、ショートケーキ。
「この子に触るな」
アメリカから発せられたセリフは、今まで彼からは聞いた事の無い低くて冷徹なモノだ。
自然、日本は勿論その場のモノが黙って恐怖の色を宿しアメリカを見やる。
日本が正気に戻るよりも早く、男二人組は正に逃げ出す、という感じで店の外へと駆け出してしまった。
「君はさ、やっぱり分かってないよ」
固まったままの日本の頭の上にクリームの付いていない方の手を乗せると、この間と同じセリフを呟いてアメリカはスルリと教室から出て行った。
後に残されたクラスメート及び客はシン…と静まりかえってみんなの視線が日本に集まっているのを感じる。
こうして一人残されて一体どうすればいいのだろう、とお盆をギュッと握った頃、不意に後ろから聞き慣れた、妙に明るい声がする。
その声だけで雰囲気が一変して重苦しい空気が消えた。まるで突飛な空気清浄機だ。
「っていうかぁー、オレもあの男が日本の足引っかけたのみたし。」
何故か袴姿で、しかも何故か従業員なのに椅子に座って、そしてまた何故か店の菓子を無断でポリポリ食べながら、ポーランドは笑っていた。
「えっ?」と眉間に皺を寄せた日本が呟くと、ポーランドはもう一度先程のセリフを繰り返した後、ちょっとだけ小首を傾げる。
「追わんの?アメリカ」
ポーランドが何とも不思議そうにそう言うモノだから、日本も思わず「その通りだ」とポーランドに頷きを返す。
「すみません。帰ってきたら床を拭きますので、ちょっと行ってきます。」
握っていたお盆を机に乗せると、慌てて教室を飛び出す。まだ、直ぐそこに居るかも知れない。
まだ11時だというのに、廊下には沢山の人がひしめき合っていてこの中から一人の判別は困難そうだった。
けれどあの美しい金髪は、恐らく一目見たら分かるだろう。
たった3分走っただけで、はき慣れないブーツの所為で足の裏が痛み始めたが、未だにあの目立つ青年は見つからない。
講堂の横にある人気の無い舞台裏への道の前に差し掛かった時、不意に左腕が強く引かれ、走っていた反動で転げ込む様にその引かれた方へ倒れ込む。
倒れ込んだのはどうやら人らしく、甘いクリームの香りが瞬時日本の鼻孔をついた。
もしや探し人だろうかと目線を持ち上げ、瞬間凍り付く。先程の男だ。
口を開くよりも早く、手で口を押さえられ、素早く講堂の中に押し込まれる。
講堂は薄暗く、舞台の上にしか光が当てられていない。講堂が使われるのは午後からで、当然の様にまだ誰も居ない。
後ろから抱き抑えられ、一番に思い出したのはこの間の事件の後の食事で兄が言った たまたま助かって良かった というモノ。
もし、助からなかったら? サァッと全身から血の気が失せ、目の前が真っ暗になる。
口を押さえていた男の手に、思いっきり爪を引っかけ思いっきり腕を引いた。
「痛っ!」
と、声を上げ、抑えていた男の手の力が緩み、日本は直ぐさま男の身体からすり抜ける。
「お前、何やってんだよ!」もう一人の、あの茶髪の男が怒鳴り、出口を塞ぐので、自然と日本は反対の舞台の方へと駆けていく。
確か、舞台の裏側に楽屋に続く通路に扉があった筈だ。
袴の裾も気にせず、光が当たったままの壇上に上ると、午後に行われる吹奏楽部様に配置された椅子をすり抜け脇に設置された鉄製の扉に向かった。
冷えたドアノブを掴むと回し、思いっきり引いた。ガシャン、と大きな衝動が一つあったが、開きはしない。鍵が。かかったままだ。
真っ青になりつつ後ろを振り返ると、もう二人組は直ぐそこまで来ている。
と、不意に日本の右横の暗幕の向こうの闇から一つ陰がスッと現れると、日本の直ぐ横に立った。
神秘的、といえる程整った顔つき。短めに切られた金髪の髪の下に、酷く不機嫌そうに吊り上げられた眉とエーゲ海の様な青緑色の少々鋭い瞳。
それからあまり日に当たっていない様な白い肌と、つまらなさそうに閉じられた唇。痩せ型ではあるが、どこか威圧的だ。
キチンと着こなした学生服は、彼がこの学園の生徒である事を示唆していた。
「なんだ、折角静かで良いと思ったのだが、変なのが二匹も飛び込んで来た様だな。」
心底嫌そうな顔を浮かべ、彼は澄んだ声色でそう吐き捨てるのと同時に、直ぐ横に置かれた椅子の一つを思いっきり蹴り倒す。
ガシャン!という音は、静かな講堂では酷く響き、日本も交えて三人同時に肩をビクリと震わせて固まる。
が、この名を知らない青年は、日本の左手を取ると「行くぞ」と一声掛け、鍵穴に自分で持っていたらしき鍵を差し込んだ。
日本と青年がドアをすり抜ける寸前、慌てて走った男の手が日本の右腕をガッシリと掴んだ。
思い出したのはやはり兄の言葉で、日本は何かを考えるよりも早く、その右足で思いっきり蹴り上げた。その掴んできた男の、局部を。
変な、感触です。 と、思わずこの方法を教えてくれた兄に向かって日本は心の中で一言呟いた。
けれど、効果覿面とはこの事か!思わず同情してしまいたくなる様な苦しみ様で男が蹲るのを、閉まる寸前の扉の向こうで見た。
楽屋の前の廊下は白く塗られていて、付けられた電気が良く反射し、今まで真っ暗な所に居たモノだから頭がクラクラする。
「あ、有り難う御座います」
助けてくれた青年に慌てて向き直ると、日本はペコリと頭を下げた。不機嫌そうな彼の顔が、見間違いか若干緩んだ気がする。
「最後のキック中々のモノであったな。」
少々楽しそうな彼の口調に、思わず日本の顔にカッと朱が差し込み、日本は思わず目を伏せてしまう。
初めて兄にその方法を聞かされた時、まさかそんな事をするだろうか?と思っていたのだが、今正にそのマサカだった。
ガシャン、と閉められた鉄製の扉が一度鳴るが、勿論鍵を掛けた後なので扉が開く心配は無い。
「……教室まで送るか?」
どうも自分は絡まれやすいのでは、とこの時初めて少しだけ気づき始めていた日本にとって、それは心底有り難い言葉ではあった。
相手が例え名前も分からない人物であったとしても、先程の男達よりは絶対的に安全であるし。
「…お願いします」という日本の言葉を聞くと、コバルトグリーンの目をした青年は小さく一つ頷き、廊下へと続く扉を押し開けた。
日本の教室につくまでの間、二人には一つの会話すら無かった。
本当は日本は青年の名前を聞きたかったのだが、ムッスリとした彼の横顔をチラリと盗み見る度にその勇気がしぼむ。
『浪漫喫茶』というちょっと呆けた名前の看板が見えるあたりで、彼が不意に日本に目線を送る。ギリシャの海の様な双眼。
「名前は?」
予想だにしなかった彼のセリフに、驚き見上げてから慌てて名乗ると、彼は一言「そうか。では。」といって踵を返す。
「あのっ、あなたのお名前は?」もう後ろ姿を見せた彼に、今度は日本が急いで名前を尋ねるとちょっとだけ振り返って、
「スイスだ」と、あの落ち着いた口調で名乗り、少しだけ口を歪める。否、それは笑ったのかもしれない。
キラキラと光を受けた金髪が輝いた。
午後二時!
一ヶ月前からの約束がこうをなしてか、ラッキーな事に三人の空いている時間がガッチリ合った。
日本の教室をヒョッコリと覗いたまま、にんまりと韓国が笑顔を浮かべる。
家では当然会えないし、校内でも時間や部活や委員会やらで中々三人が一緒になる事はあまりなかったのだが、今日は何と言っても特別な日。
「韓国さん」
嬉しそうな声を上げて、袴姿で盆を持ったままの日本は嬉しそうに自分に駆け寄ってくる。
「日本、二時だから迎えに来たんだぜ!」
はい と応えると彼女は一度奥に引っ込み、お盆から鞄に持ち替えてまた姿を現した。
取り敢えず兄貴の所に行こう、と手を引っ張り生徒会の教室に向かうと、そこには学園祭のアンケート集計とパンフレット配りと客の道案内を同時にこなしている(でもかなり混乱している)兄の姿。
「兄貴!」
と呼びかけると、振り向いた彼はパッと驚いた顔をした。
「もっもう二時あるか?!わ、悪いけど我は…」
ヒィィ、と唸り声を上げそうな程切羽詰まった表情でコチラに向かって謝ってくるが、一ヶ月前から楽しみにしていた自分にとっては面白くない。
えー! と唇を尖らして文句を言いかければ、日本はしょうがないですよ。と少しだけ悲しそうに微笑んだ。
「ご、ごめんある。今度メシでも作ってやるから。」
自分の事を兄は申し訳なさそうに見るが、それが無理な事だなんて分かっているのか否かの判断は難しい。
「約束なんだぜ。」ぶぅ、と思いっきり膨れっ面を作って文句を言って約束を取り付けるが、その約束は結局親が許してくれる筈が無い。
もう父親も日本の母親も死んだというのに、自分の母親は未だにこの二人に執着しきっていて、二人に自分が会うのを酷く嫌がる。
「仕方がないから二人で回るんだぜ。」
日本をチラリと見ると、彼女はいつものふんわりとした笑顔で頷いた。あの長かった髪がウィッグで帰ってきて、何だか凄く懐かしい。
午後二時となると、回れる時間もあと僅か。
どこに行こうか、とパンフレットを手に廊下を二人で歩いている時、チラリと横に並んだ日本の顔を見ると、少しだけ不安そうに陰っているのを発見する。
「今日何かあったか?」
不思議に思うと思わず率直に聞いてしまうのが自分の性格で、彼女はそんな自分を見上げてフルフルと慌てる様に頭を振った。
嘘だ。とは直ぐに分かる。けれどもその次に何と言って良いかが自分には分からない。
兄だったら…兄だったらもっとうまく日本から聞き出して慰めたり出来るのだろうか?
不意に自分がらしくなく沈んだのに気が付き、慌ててかぶりを振って大きな声を出した。
「そうだ日本!オレ、日本に良いモン買ってきたんだぜ!」
え? と驚いて目を大きく見開いた日本の掌の内に、鞄から前町中を歩いていて発見した和風のストラップを取り出して握らせる。
赤系のいくつものヒモを綺麗に編み込んでいて、先に鞠の様な飾りが付いていた。
「可愛いです!」わぁ、と嬉しそうに日本が微笑むものだから、思わず自分まで買ってきて良かったと笑顔になる。
「日本は前の携帯に何も付けて無かったから、丁度良いと思って……あ!新しい携帯にまだオレのアドレス登録して無いんだぜ!」
あ、と彼女も慌てて自分の鞄から新品の携帯電話を取り出すが、昔から機械音痴な事もあってか未だに扱えないらしくワタワタとしていた。
「貸すんだぜ」
手を出すと、 すみません、紫外線とか良く分からなくて… とシュン、とする彼女に「赤外線なんだぜ」とツッコムべきか内心激しく悩んだ後、つっこまない事にした。
自分の携帯に日本の携帯を向き合わせながら、不意に昔の事を思い出す。
あれは正月か何かで父親の邸宅に行ったとき、日本の親戚に陰口を叩かれているのを聞いてしまった時だ。
まだ確か自分は11歳で、日本が10歳だった頃。
まだ幼かったのに、彼女は自分の帰り際に目に涙を溜めて「ごめんなさい」と頭を下げた。あの瞬間、自分は酷く腹を立てた。
何を憎むべきか、そこで見失ってしまったから。
考えてみれば、自分達三人は酷くアンバランスで、まるで安いレストランのオレンジジュースみたいに薄い関係。
その中で自分は彼等二人と比べれば、もっともっと遠く離れている様な気さえする。この様にアドレスを交換したところで、その関係が近付くのかは良く分からなかった。
でも兄同様、自分は彼女を慈しんできた事には何等変わらない。
痛い目にも、悲しい目にも、苦しい目にもあってほしくは無いし、出来うる限りの幸せを得て欲しい。
「はい、終りなんだぜ」
と、手に持っていた携帯を彼女に手渡せば、自分を見上げ、幼い頃と少しも変わらない笑顔をパッと自分に惜しげもなく向ける。
「ありがとうございます。これで韓国さんといつでも連絡が取れますね。」
そのたった一言で、全てが吹き飛んだ気がする。
「良し!屋上行くんだぜ!」と日本の手を取れば、「えぇっ!学園祭なのにですか?」と後ろの彼女は驚いた声を出した。
あまりにも怒濤な学園祭の一日目がようやっと終り、ドイツ、イタリア、日本は並んで下駄箱に差し掛かった。
生徒会は未だに忙しい、と泣きながら兄が訴えていたので、今日は先に帰って兄の好物を作ってやろうと思案する。
と、寮に続く道に、見慣れた後ろ姿を見つけて、二人の同居人に「先に帰っててください」と一言告げて駆け寄った。
「アメリカ君!」
大きな声で名前を呼ぶと、一瞬肩がピクリと揺れた癖に振り返ろうとはしない。まだ拗ねているのかもしれない。
全く持って子供なのだ、と思わず日本はため息を吐いた。
こんな時どうするべきか、あの自分が見習うべき陽気な同居人を思い出して駆け寄り、ピョンっとその後ろ姿に抱き付いた。
もの凄い根性であったが、この幼く子供っぽい彼にするには、そこまで確固たる決意は必要なかった。(結局そこまで相手にされてないのか)
しかし、キチンと待っている同居人二人並びに周りの生徒達は一様に酷く驚き固まる。
「そこまでへそを曲げないで下さい。」
怒った口調で一言告げると、日本は直ぐにアメリカから離れるとペコリと頭を下げた。
「ごめんなさい……あの、今度私が何を分かってないのか、教えて下さい」
しどろもどろと言葉を紡ぐに日本に、アメリカは先程までの詰まらなさそうな顔を瞬時に笑顔に変え、そっと屈んだ。
「いいよ、そのかわり今度デートしてね!」
日本の額に唇を落とすと、彼は楽しそうに笑顔で手を振り振り、寮への道を駆けていく。
顔を真っ赤にさせて固まった日本を残して。